地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
かつて北アメリカ大陸に生息していた「リョコウバト(旅行鳩、passenger pigeon、学名・Ectopistes migratorius)」の最後の1羽が、この日、アメリカ・オハイオ州のシンシナティ動物園で老衰のため死亡しました。
リョコウバトは、史上最も多くの個体数を誇った鳥ともいわれ、19世紀初頭には約50億羽が生息していたと考えられています。
しかし、食用を目的とした乱獲によって、100年間の間にその数は激減し、野生のリョコウバトは1907年を最後に確認されていません。飼育下の個体も最後の1羽が1914年に死亡し、種は絶滅にいたりました。アメリカ大統領ワシントンの妻にちなんで「マーサ」と名付けられた、最後のリョコウバトは動物園生まれで、動物園育ちでした。
これほどたくさんいる鳥が絶滅するとは、1890年ころまでは誰も考えていなかったそうですが、人々がその危機に気付いたときには、すでに取り返しがつかないほどに数が減っていたのです。
また、リョコウバトはかなりの大群を作って移動するため、いるところにいるけれど、いないところにはまったくいないため、数が減少している事態に気づかれにくかったということもあったようです。
また、繁殖期は1年に1度、1度の繁殖期に産む卵の数は1つ、という繁殖力の低さも、絶滅を早めたといわれています。
リョコウバトが生息していたアメリカでは、クローンの計画を考えている研究者もいるそうですが、途絶えかけた生命の連鎖を守るのは至難の業です。リョコウバトの教訓を将来に生かしたいものです。
マーサは死後、研究のために解剖された後、剥製にされました。長く、スミソニアンの国立自然史博物館に収蔵されていましたが、現在は飼育していたシンシナティ動物園で保管されているということです。
なお、鳥類学者・蜂須賀正(1903~1953)が手に入れた剥製が、現在は千葉県の山階鳥類研究所で保管されています。これが日本にあるただ1体のリョコウバトの剥製だということです。