N国が話題の中、NHK「常時同時配信」が放送業界全体に与える衝撃

放送の「死」、その先に何が残るか
飯田 豊 プロフィール

もっとも、裏を返せば、NHKの番組を視聴するかどうかをスマートフォンで選択できるなら、テレビ受像機で視聴するかどうかを選択できない道理はありません。常時同時配信の解禁は、現行の受信料制度との整合性に課題を残しています。

したがって、放送法改正を新聞各紙は、「同時配信でNHKが独走すれば、民放とNHKが共存して多元的な価値を提供する機能が損なわれかねない」(朝日新聞5月31日社説)、「公共放送として、節度ある事業運営が求められる」(読売新聞6月13日社説)などと牽制的に報じました。

本サイトにおいても、ジャーナリストの時任兼作氏が「NHK、過去最高額『7332億円の収入』に問う受信料の存在意義」という論説を寄稿しています。

 

それに対して民間放送事業者は、法律的な制約はないものの、常時同時配信には消極的な姿勢でした。

海外では定着しているものの、著作権処理に要するコストなどを含めると、日本では採算がとれる見通しが立っていないことに加えて、系列関係にあるローカル民放局との調整も大きな課題です。

在京キー5局はこれまで、スポーツ中継を中心として同時配信の実証実験をおこなっていますが、ドラマやバラエティの見逃し配信サービスの充実のほうに注力してきました。

ところが7月末、在京キー5局が、夕方のニュース番組をインターネットで同時配信する実験を、来年1月の実施に向けて準備していると報じられました(共同通信7月29日配信)。NHKに水をあけられないよう、及び腰から一転、追随せざるをえなくなったわけです。キー局の放送区域は関東1都6県ですが、ネットでは全国で視聴できるようになります。CMがそのまま流されるかどうかは未定(協議中)です。

民放の常時同時配信についても、参入が不可避であるならば、せめて地域制御を導入すべきという意見が強いのは当然です。ちなみに、民放ラジオは2010年、地域制御にもとづく常時同時配信サービス「radiko」を開始しましたが、2014年には「radikoプレミアム」によってエリアフリーを解禁しています。

さらに8月に入ると、あくまで限定的ではありますが、NHKが民放番組の無料配信サービス「TVer」に参加することも分かりました(共同通信8月2日配信)。このように改正放送法を呼び水として、テレビとネットの関係は刻々と変化しているのが現状です。