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N国が話題の中、NHK「常時同時配信」が放送業界全体に与える衝撃

放送の「死」、その先に何が残るか

2019年7月の参議院選挙で議席を獲得した「NHKから国民を守る党(以下、N国)」の存在感が高まっています。それにともなって、NHKの受信料制度、放送の政治的公平性などを定めている「放送法」が、ニュースのなかで話題になることも増えてきました。

N国に関連する報道では、放送法を時代遅れの政治的遺物として論じる向きもありますが、今年の5月、これからの放送のあり方を左右する重要な法改正がおこなわれています。これによってNHKは、テレビ放送をインターネットに「常時同時配信」できるようになり、2020年3月までに開始する方針を示しています。

言うまでもなく、スマートフォンで動画を視聴する若年層が急増していることを見据えたもので、東京オリンピック・パラリンピックの開催に先立って、いわゆる「テレビ離れ」に歯止めをかけるための施策です。

これはNHKの変化だけにとどまりません。テレビの常時同時配信は、しばしば「パンドラの箱」に喩えられてきました。放送業界全体に対する影響、とりわけ地方の民間放送局(以下、ローカル民放局)に与える衝撃は、計り知れません。

N国の躍進に関する国会質問を受けて、政府は8月15日、今後も公共放送と民放の2元体制を維持するとの答弁書を閣議決定しました。しかし、「NHKをぶっ壊す」というスローガンを掲げているN国のシナリオとは異なるかたちで、2019年の法改正が、放送の歴史にとって大きな分水嶺になるかもしれないのです。

 

改正放送法を呼び水とするテレビの地殻変動

2019年5月29日、改正放送法が成立しました。

NHKによるインターネット活用は、2007年および2014年の放送法改正を経て、公共放送に課せられた目的を達成するための業務であるものの、法律上は実施が義務づけられない「任意業務」に位置づけられてきました。

しかし常時同時配信はこれまで、「NHKの肥大化」「民業圧迫」「市場競争の阻害」といった反発が根強く、その実施が認められていませんでした。

NHKは民間放送事業者に配慮して、いわゆるエリアフリーではなく、地域外の番組は視聴できないような技術的規制(=地域制御)を導入する予定ですが、この方針がいつまで続くか分かりません。

また、NHKのインターネット活用業務費は受信料収入の2.5%を上限とする現行規定がありますが、常時同時配信の実施によって、この数値が今後も厳守されるかどうかも不透明です。

常時同時配信の実現に向けて、NHKは当初、テレビ受像機を持っていない世帯であっても、ネットで番組を視聴できるパソコンやスマートフォンを所有していれば、受信料を徴収したい意向を示していました。

しかし反発が不可避であることから、NHKは当面の方針を転換。常時同時配信はひとまず、受信料を支払っている世帯向けのサービスとして位置づけられました。