N国党が次は「文春砲」「マツコ・デラックス」を狙った恐るべき理由

本当に「日本版トランプ」と化す可能性
真鍋 厚 プロフィール

支持者は「鏡の国の住人たち」

N国党は、NHKのスクランブル化の実施を公約に掲げたシングルイシュー政党だが、放送法4条違反を指摘した「マツコ・デラックス出待ち騒動」で明らかになったように、おそらくはNHKだけでなく、主流メディアに代表される既得権益層に「お灸」をすえる役割を自任している。

つまり、第4の権力といわれる「マスコミ」に対するカウンターとなることで、自らの政治的ポジションを築こうとしているのだ。

 

立花氏と「文春砲」とのバトルが象徴しているのは、ネット上ではいわばマスコミの代名詞ともなった「印象操作」に対抗するゲリラ戦が本格化し始めたことと、YouTubeというマスコミを相対化する世界的動画共有サービスを舞台とした、「新しい戦線」の誕生だ。

単純に、オールドメディアvs.ネットメディアという構図で捉えることもできるだろう。NHKに続いてマツコ・デラックス、週刊文春という「誰もが知っているマスコミ(の代表者)」をターゲットとしたことに、立花氏の嗅覚の鋭さが伺える。

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ここで重要なのは、オールドメディアとネットメディアでは、それぞれの視聴者・受け手の「見ている風景」が異なることだ。

N国党支持層は、立花氏らがNHKに代表される主要メディアと、メディアの既得権益を守ろうとする人々に闘いを挑んでいることに共感し、立花氏が引き起こす騒動の一つひとつを痛快なエンターテイメントとして享受している。

そのようなYouTubeに多くの時間を費やす「主要メディアを必要と思わない人々」は、主要メディア側から見れば、世界観が反転したいわば「鏡の国」の住人のようなものだ。

彼らにとって、テレビを持っているだけで請求されるNHKの受信料ほど不可解なものはない。Amazonプライム・ビデオやネットフリックスなどの映像配信サービスが浸透すればするほど、「見てもいないのに支払いを強制される」時代遅れの制度に腹が立って仕方がないだろう。

消費者としての生活実感に根差した「理不尽への反発」は、世界的にみても看過できない問題となっている。「都合の良い搾取のシステム」に胡座をかいた、既得権益層への反発が巻き起こっているのである。

日本では議会進出するまでの勢力にはならなかったが、ファイル共有ソフトの合法化、著作権法改正などを掲げた「海賊党」は、シングルイシュー(に近い)政党の前例として参考になるだろう。ちょうど10年前、欧州議会選挙に海賊党党首のリカルド・ファルクヴィンゲ氏が出馬し、初めて1議席を獲得して大きな衝撃を与えた。

もちろん、N国党と海賊党は政策やスタンスも違っているが、「時代状況にそぐわない単一の課題の解決」を求める民意に担ぎ上げられた点で共通している。日本でも少し遅れて、このようなまったく新しい動きが起こっていると考えざるを得ない。