ただ、重大な落とし穴もありました。どうしても論文を掲載したい研究者を標的にして、高い掲載料の代わりに、実質的な査読なしに論文を掲載する出版社が出てきたのです。こうして作られる粗悪な学術雑誌は「ハゲタカジャーナル」と呼ばれています。
研究者の間の競争が激しくなればなるほど、どうしても業績として論文を出したい人も増えてきます。そこにつけ込んで、研究者に多額の掲載料を求めたのです。もちろん、実質的な査読なしにしか学術誌に掲載されないような論文の質は低いものです。これでは質の低い論文の大量生産になってしまいます。

研究者の金銭的負担は増す一方
しかし、ハゲタカジャーナルの寿命もそれほど長くはありませんでした(もちろん、今でも存在はしていますが)。ハゲタカジャーナルのリストが作成され、そのような雑誌に論文を掲載している研究者に対してネガティブな評価がなされるようになってきたのです。
また、学術誌の出版社も、査読の体制を整えたしっかりとしたオープン・アクセス・ジャーナルを出し始めています。エルセビアはすでに400を超えるオープン・アクセスの雑誌を出しています。さらに通常の学術誌の中でも、研究者が望めば(正確には掲載料を支払えば)、当該論文を誰でもアクセスできるオープン・アクセスにすることもできるような仕組みを取り入れ始めました。
もちろん、コストはかかります。前述のように、オープン・アクセス・ジャーナルの場合には、そのコストは読者ではなく、研究者が払う仕組みになっています。
だいたい論文1本あたりの負担費用は150ドル〜6000ドル(約16000円〜約64万円)と、けっして安くはありません。しかも、研究者は、論文1本だけ出版するわけではありません。しかも良い研究プロジェクトほど多くの成果が生まれますから、その負担の大きさは想像に難くないでしょう。