国内外の研究者たちが悲鳴…電子版学術誌の高騰が引き起こす「惨事」

マスコミが報じない危機的状況
清水 洋 プロフィール

学術誌に掲載されるような科学知識は、企業のビジネスにとってとても重要な役割を担うものです。しかし、基礎的なものであり、特許にならないようなものも多く含まれます。特許による専有化ができないので、企業はなかなか自分では研究開発投資をしないような部分です。だからこそ、大学や国の研究機関がそこを担っているわけです。

しかし、購読料が高くなってくると、それを購読する資金がある機関の研究者や学生のみにアクセスが限定されていきます。元々、学術誌の購読料自体は存在していたので、完全に非排除性がないわけではないのですが、購読料がこれだけ高騰してくると排除性がかなり強くなってくるのです。

周回遅れの知識を使うはめになる

学術誌の話は、ビジネスとは関係ないと思う方もいらっしゃるかもしれません。ただ、そんなことはありません。

企業が収益性を上げるためには、投入した経営資源の生産性を上げなければなりません。国際的に見るとヒトやエネルギーが比較的高い水準にある日本企業が高い付加価値を生み出そうと思えば、当然、体系的に蓄積された知識はとても大切になります

知識は、多重利用できます。持ち運びにコストもほとんどかかりません。その知識をアップデートしていくことは極めて大切なのです。

 

重要になってくる知識は、いわゆる自然科学のものだけではありません。数学や経済学で博士号をとった人材の獲得競争は、ここ10年ぐらいで激しくなっています。最先端の知識をビジネスにいかに活かすかが重要なポイントになってきています。

大学の図書館が購読をやめてしまっても、完全に読めなくなるわけではありません。購読している他の図書館から借りたり(これを「インターライブラリーローン」と呼びます)、自分で購読したりすることもできます。

しかし、それでは圧倒的にスピードが遅いのです。研究はプライオリティ競争、すなわちスピード競争です。必要があればいち早く先行する研究をチェックできる体制がないところでは、最先端の研究を期待することはなかなか難しいでしょう。

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