「私が先生だと証明できますか?」驚きの講義、その狙い

学生に混じって教室に座り…
宮内 洋 プロフィール

「ええウソでしょ!」

打越さんのエッセーでは触れられていないが、この集中講義の話には後日談がある。

5年後に再び、琉球大学での集中講義にお声をかけていただいた。

進路変更をして大学院に進学して社会学を研究する打越正行さんに声をかけてみたところ、あの時とまた同じようなことをしてみようということになった。

しかし、せっかくその「悪だくみ」を知っている人間が二人もいるのだから、二人で作戦を決行することになった。

 

5年後の琉球大学の集中講義でも、私は開始時刻よりも早めに教室に入り、一番後ろの席にぼーっと座っていた。

開始時刻を少し過ぎた頃、打越さんが教室の前のドアから入り、教壇に立った。彼は集中講義の講師であると挨拶し、現代社会について語り始めた。

まだこの頃の打越さんは大学院の修士課程だっただろうか、人前で現代社会論を展開するには力不足で、途中でまさにグダグダになってしまった。

打越さんからのSOSコールを受けたような感じがして、私はまたゆっくりと教室の前に向かう。

そして、話に詰まっている打越さんに、「オレに代われ」と言って、そこから4年前と同じように話し始めた。

「ええウソでしょ!」という受講生たちの驚きの表情が忘れられない。いきなりの途中交代なので、4年前よりもさらにインパクトが大きかったようだ。

最後に、この文章を書く数日前のこと。

冒頭の集中講義からおよそ20年後に、当時の一部の受講生たちによって那覇でささやかな酒宴が開かれ、私も参加した。

結果として、この集中講義から新進気鋭の若き社会学者が生まれたわけだが、琉球大学を卒業して公務員となった当時の受講生の一人が、公務員を辞めて猟師になっていた。その話もいろいろと聞かせていただいたのだが、その話はまたの機会に。