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「私が先生だと証明できますか?」驚きの講義、その狙い

学生に混じって教室に座り…

「私は誰なんでしょうか」

琉球大学での集中講義の初日、講師であるはずの私はスーツ姿で教室の前のドアから登場することなく、Tシャツとジーンズ姿で教室の一番後ろの席にすでに座っていた。しばらくして、隣に座っていた女性の学生に話しかけた。

「ここ、集中講義の教室でいいんですよね」

彼女は笑顔で間違いないと答えてくれた。

気を良くした私は彼女にもう少し話しかけた。

「この先生って、どんな人なんですか?」

彼女は、全然知らないと返してくれた。

クリスマスにわざわざ講義をするくらいだから、簡単に単位をくれれば良いのになどと二人で笑い合った。

講義時間になっても講師はいっこうに教卓の前に姿を現さない。二人は「遅いですね~」と微笑み合っていた。

なんだか、自分以外の誰かが講義をしにやって来るのではないかとさえ思っていた。

***

 

しばらくして、私はゆっくりと教室の前に向かう。

そして、おもむろに教卓の前で話し始めた。当時は「情報量が多い早口がエラい」と誤解していたので、いわゆるマシンガントークで一気にまくし立てたと思う。

しばらく話してから、受講生の顔を見渡しながら尋ねてみた。なぜ私の話を真剣に聞いているのかと。さらに、私はこの集中講義の講師であるかどうかわからないから、私の話を聞いても時間のムダではないかと問いかけてみた。

「面白いからいい」と答えてくれた受講生もいたが、仮に面白いからと聞いたとしても、私は講師でないかもしれないのでこの教室にいる人たちに単位を出せない可能性もあるのではないかと問いかけた。

講師かどうかわからない人が勝手に教室で話しているかもしれないから、教室から叩き出した方が良いのではとも言ってみた。「妙なこと」を言う人だという表情を受講生の多くはしていた。
 
「それでは、私は誰なんでしょうか。仮に、この集中講義の講師は私だとしましょう。この集中講義の講師は宮内洋と書かれています。私がその宮内洋であることを誰か証明してもらえますか」