毎年言っている気もするが、今年の夏は暑かった。熱中症で亡くなった人のニュースが連日流れた。「命の危険がある暑さ」とまで言われると、外出するのも命がけに思えた。
猛暑がもたらした「命の危険」は、熱中症のような直接的なものだけではなかった。アメリカやイギリスでは、池や湖で有毒な藻が大量発生しているが、これもこの夏の高温が原因のひとつとされている。
この有毒な藻のせいで、アメリカ・ノースカロライナ州のメリッサ・マーティンさんは、3匹の愛犬を一度に失った。
8月8日の夜、マーティンさんは暑さをしのぐために池にイヌたちを連れて行き、遊ばせた。その日のうちに、イヌたちにけいれんの症状があらわれ、獣医師に診せたが、日付が変わるころには3匹とも死んでしまった。
その池には有毒な藻が大量発生していて、イヌたちはその毒素で肝臓障害を起こしたと考えられるという。
「イヌたちがボールを追いかけたり、泥の中を転げ回ったりして、楽しく遊んでいた夜だったのが、大切な命を失うことになってしまった」そう悲しむマーティンさんのフェイスブックの投稿は、これまでに3万回以上シェアされている。
この有毒な藻は、英語では一般に「blue-green algae(青緑色の藻)」と呼ばれるが、実は藻類ではない。
「シアノバクテリア(cyanobacteria)」と呼ばれる細菌の一種だ。日本語では「ラン藻」ともいう。細胞のつくりは細菌だが、植物と同じように光合成をして酸素を生み出す。
温度が高い夏には、このシアノバクテリアが湖などで大量発生する。
日本では「アオコ」や「水の華」と呼ばれる現象で、水面がまるで青や明るい緑色のペンキを流したようになり、悪臭を放つ。その水には、シアノバクテリアが生み出す毒素が含まれている。
暑い夏に楽しく水辺で遊んでいたイヌたちが、あっという間に死んでしまった。そんな痛ましいニュースの衝撃は大きく、ニューヨーク・タイムズ紙やCNN、BBCなどのメディアや、イギリス獣医師協会などが、アオコが発生している池などにイヌを近づけないよう、飼い主に注意を呼びかけている。
アメリカ環境保護庁は、アオコの池に入ってしまったときには、ただちにきれいな水で洗い、下痢や嘔吐、ふらつき、けいれんや呼吸障害などの症状が出たら、すぐに獣医に連れて行くようアドバイスしている。
症状は15分から数日で出るという。