8月9日には、児童相談所に子供が保護されている親ら親族と児相との間でもめ、警察官の拳銃を奪ったと報じられた事件がありました。厚生労働省の調査によると、児童相談所での相談対応件数は、平成29年度が210か所の児童相談所で13万3778件。毎年増加の一途をたどっています。しかし、児童相談所にうまく相談ができないという親の実態も見えます。

それはなぜなのか。どうしたらそのような親子を救うことができるのか。

宮崎で支援活動をしている富井真紀さんは、自身もネグレクトの被害者でした。そして自身もシングルマザーとなり、養女をめぐって児童相談所に子供が保護された経験も持ちます。その彼女がどのように自分の足で進み、そして支援活動ができるようになったのか――中卒で父親からお金を巻き上げられる生活から、現在に至るまで赤裸々に綴ったのが『その子の「普通」は普通じゃないー貧困の連鎖を断ち切るために』(ポプラ社)です。

子どもの7人に1人が貧困という現在、本来ならば児童相談所と親との距離は近くある方がいいはずです。それでも児童相談所に対して反発してしまう心理はどのようなものなのか、富井さんは児相に行く前に助けられる施設をどんな視点からどのように作ったのか。本書より抜粋掲載します。

親はいるけれどいないのと同じ

宮崎市内のとある住宅街に借りた一軒家は、3DKのお風呂付き。

ここに2018年4月、私が代表理事を務める一般社団法人日本プレミアム能力開発協
会(JPCCA)
は、読書・勉強Café「Very Slow」をオープンさせました。

週に4日通って来るのは、近隣の小学校に籍を置く何人かの子どもたち。
平日は学校帰りに、土日はお昼から、ちょっと寄って宿題をしたり本を読んだり、ボランティアのおばちゃん手作りのお菓子や軽食をとってゆっくりしてもらい、夕方5時には家に帰します。

Caféとは名のっていますが、利用できるのは特別な子どもたちです。親はたいていシングルマザーで、ダブルワーク、トリプルワークで家計を支えています

それでなくても宮崎は賃金が低いので、シングルマザーの場合、早朝から深夜まで仕事を掛け持ちしているケースが多く、家事や育児に手が回らないのが実情です。シラミがわいたり、1日の食事は給食だけなんていう子も、中にはいます。

福祉の専門家に聞くと、親の面倒見が薄い子は給食の食べ方からして違うんだそうです。自分で食べられるはずなのに、先生が口に入れてくれるのを、口を開けて待っている。甘えるそぶりを見せるのだとか。

児童相談所の方が家庭訪問すると、室内はゴミ屋敷同然で、夏でも窓を締め切り、エアコンもつけずに子どもが留守番をしていることがあるとか。

「米が食べられない子はいないんです」2018年6月に二階俊博幹事長は言っていたが、本当にそうなのだろうか Photo by iStock

食事の用意をせずに親が仕事に出てしまうので、空腹のため、学校に行く気力も体力も失っている子がいるとか。

親の生活に振り回され、勉強どころではないのか、平仮名すら読めない、書けない子もいるそうです。

親はいるけれどいないのと同じ。

そういう家庭は概してひとり親家庭で、生活が困窮しています。親の多くが低学歴で、そのため収入のよい職に就くことができません。低賃金の仕事をいくつも掛け持ちしていて、家事や育児に時間を割けません。

結果、ネグレクトに近い光景が、ここ宮崎にも広がっています。