物価上昇目標2%に固執して、世界の金利は間もなく「水没」する

「最大の被害者」は、資産運用業と家計
高田 創 プロフィール

トランプは相変わらず圧力

さらに、米国の利下げ圧力を強めるのは米国のトランプ大統領の意向である。すでに、トランプ大統領はFRBに対して利下げ圧力を異例な形で加えている。

こうした対応は、通常、中央銀行の独立性を重んずる一般常識と反するが、そうした常識はトランプ大統領には通用しない。

しかも、来年、2020年11月の大統領選を前にトランプ政権の再選の条件として経済株式市場の良好な状況を重視しており、FRBへの圧力は一段と高まる可能性が高い。

さらにトランプ大統領は、米ドルの対主要通貨での高さも、FRBによる金利の高さによるものという見方も示している。

そのため、利下げにより通貨引き下げを示唆し、事実上の通貨戦争に米国も参戦しようとしている。

ただし、それでも依然、米ドルに底堅さが残るのは、米国経済が依然堅調との見方が根強いからだ。仮に米国経済の減速が鮮明になれば、急にドル安圧力が加わり、通貨戦争が顕現する恐れを秘めている。

 

もはや歯止めなき世界に

以上、米国が、いわば「壊れた温度計」のような物価目標の2%水準に固執し利下げを続け、加えてトランプ大統領が利下げ圧力を加え続ければ、FRBも、2015年から9回の利上げを行ったことで確保した利下げ余地=「9発の弾」を使い果たしてしまう可能性もある。

少なくとも「弾が残っているなら使えばいいじゃないか」という、トランプ流の論理が勝りやすい。

こうした状況の中で、先に説明したように、従来、世界の金利水没のなかで「浮き輪」であった、米国金利という存在までもが水没に向かおうとしている。

それは、世界中がマイナス金利に覆われる、冒頭で示した映画『天気の子』が描く水没する大都市の姿そのものだ。

先述の図表2の水没マップでは、米国中心にアングロサクソンの諸国、英国、オーストラリア等の金利水準は比較的高かった。また、主要新興国、中国やインドの水準も高かった。

ただし、昨今、英国はブレクジットの影響もあり、マイナス成長に転じ利下げの可能性も生じつつある。新興国も中国経済の減速下、利下げに向かい出し、インドは2019年になって既に連続的利下げを行っている。

これまで世界で浮いていた金利も沈み、世界から浮力のあるものが無くなりだした。しかも、通貨戦争のなか、既に沈んでいる欧州や日本はマイナス金利の一層の深掘りを検討しだした。通貨戦争も加わり世界水没競争に歯止めが利かなくっている。

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