物価上昇目標2%に固執して、世界の金利は間もなく「水没」する

「最大の被害者」は、資産運用業と家計
高田 創 プロフィール

2%物価目標は本当に妥当なのか

ただし、世界的に先行きの不確実性は存在するものの、米国の実体経済上、依然、底堅さも残している。従って、本来、そこまで金利が低下する要因はなく、ましてや利下げが行われる必然性も低い。

そうしたなか2019年7月の利下げの背景として重視されたのが、米国の物価上昇率が物価目標の2%の水準に達していない点であった。

今日、世界的に賃金は上昇しても物価水準そのものは従来のような水準に達しない。こうした状況は、世界的な構造変化、シェアリングエコノミーや高齢化、GAFAを中心とした巨大企業の独占的状況等、さまざまな理由が考えられているが、いずれも決定的ではない。

今や世界的な減速局面に転じ、従来以上に物価目標到達は困難になっている。そもそも、世界的な目安とされる2%の物価目標に達するまで合目的に利下げを続ける政策が妥当なのかについての議論も存在する段階だ。

 

2%に固執すれば米国も弾を打ち尽くす

筆者はここ数年、ストーリーラインとして金融政策の「OKルール」を提唱してきた。これは、ゴルフの喩えに由来し、ゴルフで完全にカップインしなくても一定の近さに達した場合、周囲の了解のもとにカップインしたとみなしてゲームを続けることである。

今日のように、物価上昇になりにくいなかで、2%物価目標に固執して金融緩和を続けるよりも、経済全体を総合的に評価して弾力的に対応すべきとする趣旨である。

一方、物価目標に固執し続け、2%水準に達しないとして金融緩和や金利の引き下げを続けると極端な低金利に陥り、その結果、金融市場の各所に副作用が生じることを危惧してきた。

筆者はこれまで、日本の環境下で「OKルール」を議論してきたが、経済の「日本化」の議論と同様、異例な日本の環境下で起きていることとみられ、議論は世界的な潮流にまではなりにくかった。

経済学のアカデミスムでグローバル・スタンダードは、米国で形成される以上、米国で依然、2%物価目標が妥当とのコンセンサスが揺らいでいない以上、日本の理屈で提唱された「OKルール」に市民権は生じにくかった。

今日も、米国で主流のアカデミスムで2%物価目標はコンセンサスであり、その延長線上でFRBのパウエル議長は2019年7月の利下げを実行した。更に、今年9月の追加利下げの可能性も高い。

2020年以降を展望し物価上昇の兆しが見えなければ、更なる利下げが続くと考えられる。2%の物価目標に固執し続ければ米国でも利下げの弾を打ち尽くしてしまう。

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