世界の金利が無くなる不安
筆者が20年前に『国債暴落』と題する著作を発表した時、1990年代に米国で出版された『世界の金利の歴史』に描かれた有史以来の世界の長期金利の最低金利を紹介した。
かつて世界の史上最低金利はイタリアのジェノバで1619年に記録された1.125%とされた。1990年代後半に、その記録を日本が破ったことが大きな話題になった。
それから、20年が経過し、日本の10年長期金利はマイナス圏に突入し、どこまで下がるか目途も立ちにくくなった。
しかも、今年7月に米国が利下げに転じ、その後、9月にも追加利下げ観測も高まっている。欧州中央銀行も9月に利下げに転じる可能性も高く、日本銀行も更なるマイナス金利の深掘りを行う可能性もある。
今や世界の主要国の金利が無くなる不安が一気に浮上してきた。
「水没マップ」が示す世界的な波及
以上の超低金利環境のなか、筆者は5年近く前から図表2「世界の金利の水没マップ」を紹介してきた。
この図表2で、横軸は国債の年限を示し、1年から40年まである。縦軸は国の名前で、最も水没しているスイスでは40年までマイナス金利(水没)状態であり、現存する国債市場全体が水没だ。同様のことがドイツやデンマークでも生じている。
ここでは、マイナスになった「水没した」ゾーンを濃く示しており、さらに、0%以上0.5%未満、0.5%以上1%未満、1%以上と徐々に色を薄くして示している。
こうした濃淡を示した図表はリスク管理の世界では一般的に「ヒート(加熱)マップ」として示されるが、これはむしろ「フローズン(凍り付く)マップ」であり、金利機能が喪失し、「麻酔」がかかったかのような状態だ。
筆者が、この「水没マップ」を示してきた5年前から、日本は常にトップかその次の序列にあった。
しかし、今年半ば、ECBの利下げ観測が高まると、欧州、なかでも欧州地域の北に位置する国々の水没地域拡大が急速に進み、図上では日本の序列は上から8番目くらいまで落ちている。
今や日本の低金利は日本固有のものでなく、世界全体の広がりのなかでの現象になった。
■図表2:世界の金利の「水没」マップ(2019年8月16日)

(資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成