アルファベットが書けない高校生も…日本「教育困難校」の危険な実態

知られざる「底辺校」の現実
佐藤 優 プロフィール

こういう高校の現状はどうなっているのだろうか。

<生徒の苦手な教科のトップは英語だ。教員は基礎からの内容を何とか身に付けさせようとさまざまな工夫をしている。

曜日や月の名称、各国の国名など基本的単語が正しく書けるように何度も繰り返し練習させ、生徒が興味を持てるようにとファストフードなど彼らがよく行く店のメニューやパンフレットも教材にする。(中略)

 

それらを行ううちに教員は深刻な問題に気付く。商店や商品の名前にこれだけ英語などが多用されているのに、実は「教育困難校」にはアルファベットを正しく書けない生徒が相当数存在するという問題だ。

特に、bとd、mとn、qとgなど似た文字を書き分けられない生徒が多い。全く勉強をする気がなく覚えようとしない生徒も少しはいるが、先天的な学習障がいを持ちながら、今まで気付かれず何も訓練を受けなかったからという理由がほとんどではないかと推察できる>

学校は「敵」

英語だけでなく、数学においても同様の問題があると思う。英語と数学は積み重ね型の学習が必要とされるので、中学段階での学力が欠損していると、それを埋めない限り高校の授業は消化できない。

生徒一人一人の学力欠損を調べ、個別に対策を立てなくてはならないが、現在の高校ではマンパワーの限界でそれはできない。また、学習障がい対策は高校になってから始めるのは遅すぎる。幼稚園か小学校低学年の段階で問題に気付き、専門家が対応していれば、アルファベットが書けないというような教育困難な状況にはならなかったはずだ。

教育困難校に通っている生徒の家庭には、貧困や両親の不和など、教育以外にも深刻な問題を抱えている事例も多いという。学校が保護者と協力して生徒を指導しようとしても、実際にはそれが難しい。

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<何より、保護者に学校に協力しようという思いが薄い。親がやるべきことの優先順位の中で学校の順位は決して最上位ではなく、それどころかかなり下のランクなのだ。

生徒が事件やトラブルを起こした時、どこの学校でも必ず保護者召喚を行う。教員は学校からの呼び出しは何より優先されると思いがちだが、保護者は仕事や兄弟の送迎、自身の先約を優先し、両者の感覚の齟齬により関係が一層ぎくしゃくすることもある。

そもそも、学校は敵と思っている保護者が多い。教育を完全にサービス業と捉え、教員が生徒や保護者にサービスするのは当たり前、トラブルや事件を起こすのも学校の監督不行き届きのせいとする保護者もいる。「忙しいのに来てやった」と言わんばかりの態度、必要以上に強がって教員を見下すような態度を取る保護者も少なくない>