医者に睡眠薬を飲まされ続けて失業…精神科「処方薬依存」の恐怖

気づかないうちに依存症にさせられる
佐藤 光展 プロフィール

精神科医たちの「責任逃れ」

このような身勝手な医師たちを放置すると、米国で大問題になっているように、医療用麻薬や麻酔薬で患者を死に至らしめるケースが日本でもやがて続出するだろう。

漫然処方の実態が長らく放置されてきた日本には、処方薬依存の被害者が数十万人規模で存在する可能性がある。

ところが精神科医たちは、処方薬依存の問題を「過量服薬」の問題にすり替えて矮小化を図ってきた。患者を処方薬依存にした自らの責任は棚に上げて、「過量服薬は、薬を飲み過ぎる患者が悪い。医師の責任ではない」と言うのだ。

 

だが、過量服薬は処方薬依存の一部に過ぎない。厚生労働省が、遅ればせながら添付文書での注意喚起を求めた「常用量依存」こそが、処方薬依存の核心と言える。

医師に言われた通りの量を長年飲んできただけなのに、次第に症状が強まったり、今までにはなかった心身の症状が表れたりしている患者は、常用量依存の可能性がある。

その場合、薬を減らすと動悸や筋硬直、頭痛、焦燥、不安、不眠などの苦しい症状が強まるため、服薬を止められない。この記事をお読みのあなた自身が被害を受けていなくても、職場や友人・知人を見渡せば、疑いのある人が見つかるのではないだろうか。

ところが厚生労働省は、何を恐れているのか実態調査に乗り出そうとしない。

この日も「(漫然処方を防ぐための)ガイドライン作成に取り組んでいます」と繰り返すだけだった。既に処方薬依存に陥っている膨大な数の被害者の救済や、処方薬の減断薬治療を適切に行える医師の養成などについて具体策を問われると、役人たちは黙って視線を落とした。

それでも、動き始めた被害者たちを止めることはできない。自助グループや被害者の会が全国各地で立ち上がり、厚生労働省へのプレッシャーは日に日に強まっている。

拙著『なぜ、日本の精神医療は暴走するのか』で紹介した自助グループ「MDAA」では、ミーティングの定期開催地が、今年8月までに東京、大阪、福岡など6都府県8か所に広がった。

中心メンバーの男性は「厚生労働省の腰は重い。ならば私たち被害者が組織的な被害者支援を行うとともに、問題の大きさを明らかにして、国や医療業界に突きつけていく」と話す。