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夫と腎臓をはんぶんこして生きる〜38歳で臓器移植をした夫婦の物語

「それでも結婚してくれる?」
中学1年生の頃、腎臓病が発覚したはるかさん。38歳のとき、夫婦間で臓器移植をした。夫と腎臓をはんぶんこして生きる――ここから見えてくる家族のかたちとは? 新刊『それでも、母になる: 生理のない私に子どもができて考えた家族のこと』(ポプラ社)より特別公開!

夫と腎臓をはんぶんこして生きる

「愛する人の一部が、私のなかに、ずくずくと生きている」

両角はるかさんの身体のなかには、夫であるたくまさんの腎臓がひとつある。中学1年生の頃から25年間、腎臓病とともにあるはるかさんは、38歳にして、夫婦間で臓器移植をした。

夫のたくまさんから、ふたつある腎臓のうちのひとつを分けてもらったのだ。

「常に夫と一緒にいるような安心感があって、夫に生かされているんだと、愛おしい気持ちが身体からむくむくと湧いてくる」

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たくまさんの臓器があるという腹部の右下を優しく撫でながら、そう話すはるかさんの姿は、新しい命を授かった妊娠中の女性にも重なる。守るべきものの存在を意識して、生きる希望で満ち溢れているような。

「たしかに、妊娠している感覚に近いのかもしれない。不思議と、心が満たされている。私たち夫婦の間に今、子どもはいないけれど、子は鎹(かすがい)と言われるのと同じように、分け合った腎臓がふたりの仲を深めてくれている気がするなあ」

 

結婚11年目にして、夫に対する愛情を恥ずかしげもなく、明るくさっぱりと語ってくれるはるかさん。その愛情は、腎臓移植という「特別」な分かち合いによって育まれたものなのだろうか。

「うーん、どうだろう。たしかに臓器移植を通してふたりの絆は深まったけれど、結婚当初からずっと仲は良くて。夫とは、恋人であり、親友であり、親子であるような関係性」

そんなふたりの関係性はどう築かれてきたのか。病気と、パートナーと、ともに歩んできたはるかさんの人生と家族のかたちを紐解く。