土壇場の自由研究にも!「中華麺はなぜ中華麺なのか」掘り下げてみた

秘訣解明でオリジナル中華麺も!?
山田 昌治 プロフィール

これら芳香族アミノ酸からファイトケミカル(植物が作り出す化学物質)であるベンズアルデヒドとアセトフェノンが合成される。この両物質は塩基性条件のもとで結合して、カルコンというフラボノイドの前駆体ができる(図2参照)。

【図】中華麺の発色反応
  図2 中華麺の発色反応

カルコンは黄色い色をしているため、麺の色は黄色になる。

ただし、もともとファイトケミカルの少ない小麦粉で中華麺を作ると、食感や香りはともかくとして、あまり発色がよくない。

そこで市販の安価な中華麺は、クチナシ色素で麺色を出すことがある。クチナシの果実には、クロシンと呼ばれるカロテノイドが存在し、希釈率によって美しい黄色色素となる。

中華麺の原理を応用する

中華麺が中華麺であるのは、生地が塩基性であることが重要であることを示した。

そこで筆者は、かん水として小麦粉に練り込むのではなく、ゆで水が塩基性になるようにすれば、他の麺でも中華麺と同じ効果が得られ、歯ごたえが増すのではないかと考えた。

使用するのは重曹である。重曹(NaHCO3)は酸性と塩基性の両方の性質をもつという意味で、「両性化合物」と呼ばれている。重曹を室温の水に溶かすと、水素イオン濃度指数pH(ピーエイチという)は8程度である。

重曹を溶かした水を加熱していくと 65 ℃くらいで炭酸ガスを放出し炭酸ナトリウム(Na2CO3)となる。 炭酸ナトリウムは、強い塩基である水酸化ナトリウム(NaOH)と弱い酸である炭酸(H2CO3)の塩なので、水溶液は強い塩基性を示す。沸騰後室温まで冷却したゆで水のpHは11くらいである。

これくらい強い塩基性の条件では、小麦粉のタンパク質を構成するグルタミンからアンモニアが脱離し、グルタミン酸となる。これは、小麦粉に共通する性質なので、スパゲッティ、うどん、素麺、いずれでも起こる現象である。

歯ごたえに物足りなさを感じる素麺で試してみたところ、水でゆでた場合と重曹入りの水でゆでた場合とで、材料試験機で測定したピーク破断強度(歯ごたえ)が約1.5倍も異なった。

興味深いことに、もともとかん水を添加している即席麺でも、重曹入りの水でゆでた場合、顕著に歯ごたえが向上した。

このあたりの実験内容は、拙著『麺の科学』で詳しく説明しているので、ぜひともお手にとってご覧いただきたい。pHを調整することで、麺の食感、におい、色が明確に変化する現象は簡単に実験できることから、中学生、高校生諸君の夏休みの自由研究テーマとしても適しているのではないだろうか。

【写真】おなじみの麺も色々と発見がありそう
  おなじみの麺も掘り下げると色々発見がありそう photo by gettyimages

麺の科学
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