土壇場の自由研究にも!「中華麺はなぜ中華麺なのか」掘り下げてみた

秘訣解明でオリジナル中華麺も!?
山田 昌治 プロフィール

中華麺の魅力の素【1】しっかりとした歯ごたえ

鹹湖の水で麺を打ったところ、食感の強い麺ができることがわかったのは明の時代である。

中国のラーメンは拉麺と書き、「拉」はつかむといった意味である。包丁で切る麺ではなく、引っ張って細い麺線を作るのがラーメンだということができる。

【写真】ラーメンはつかんで引っ張る麺?
  拉麺(ラーメン)の「拉」はつかむといった意味。引っ張って細い麺線を作るのがラーメンだ photo by gettyimages

また、小麦粉としてはタンパク質の含有率が11%以上の準強力粉もしくは強力粉が使われる。つまり、「ラーメンは、比較的タンパク質の多い小麦粉を使って、塩基性の条件でグルテンを硬くし、手延べでグルテン組織構造を強化した麺」ということができる。

歯ごたえを作るかん水とは

現在では食感の改善のために添加するかん水は食品衛生法で厳格に決められていて、「炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびリン酸類のカリウムまたはナトリウム塩のうち、1種以上を含むもの」と決められている。また、化学合成品に限るとされている。これは昔、天然の粗悪なかん水が横行していたことへの対策であると考えられる。

小麦粉に対して、1%程度のかん水を添加して生地を作ると、生地が塩基性になる。
小麦粉生地は塩基性条件で、より硬くなることが知られている。

この現象は、もともと小麦という植物が高原の砂漠地帯で進化したことと関係がある。年間数十ミリしか降雨量が期待できない地域で生命活動を営むためにはたいへんな苦労があったことであろう。

カギを握る小麦タンパク質のグルタミン

植物は、動物のように食べ物を通じてタンパク質を摂取できないため、地下のアンモニウムイオンや硝酸イオンを根から吸収し、その窒素分を利用して、タンパク質合成に必要な20種類のアミノ酸を合成している。時々しか降雨がない砂漠では、たまに得られる窒素分は貴重であったろう。

その結果、小麦には窒素分を貯めておく仕組みが強化された。通常、植物に備わっているエネルギー産生の仕組みであるTCA回路において、中間生成物質であるα-ケトグルタル酸にアンモニウムイオンを結合させてグルタミン酸を合成し、さらにもう1つアンモニウムイオンを結合させてグルタミンを合成する(図1参照)。

【図】窒素の蓄積過程
  図1 窒素の蓄積過程

TCA回路とグルタミン酸合成経路はオルタナティブであるため、通常はグルタミン酸の合成は必要最小限であるが、小麦の場合、窒素分が吸収できた場合は、グルタミン酸合成回路がフル稼働し、グルタミン酸およびグルタミンを作り続ける。その結果、小麦種子には貯蔵タンパク質という窒素分をストックしておくためだけのタンパク質が豊富に含まれている。これがグルテンの元になるタンパク質である。

以上のような仕組みの結果として、小麦タンパク質にはグルタミンが30%以上含まれている。

歯ごたえを増す結合

このグルタミンは、塩基性の条件下で、二つのアミノ基のうち1つをアンモニアとして脱離し、グルタミン酸になる。これにより塩基性のアミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)とイオン結合を起こし、分子間の結合の手が増えることによって、グルテンが硬くなる。

この現象は小麦粉に共通して起こるため、パンの分野でも塩基性の生地を応用したものがある。ドイツのラウゲンブレッツェルである。ラウゲンとは水酸化ナトリウム水溶液のことである。3%~5%の水酸化ナトリウム水溶液で小麦粉を練って作られる。

laugenbrezelラウゲンプレッツェル Photo by braetschit / Pixabay

水酸化ナトリウムは劇薬であるが、発酵・焼成に伴って炭酸ガスと反応して塩基性の炭酸ナトリウムになるため心配ない。得られたラウゲンブレッツェルは、ガリガリとした食感の、ドイツ人好みの固いパンになる。

中華麺のかん水は、ラウゲンほど塩基性が強いものではない。また、焼成とゆでの違いによって、中華麺特有の食感を発現させている。

中華麺の魅力の素【2】好ましい香り

塩基性の条件のもとで、グルタミンはアンモニアを発生してグルタミン酸となる。

ご存知のようにアンモニアは悪臭物質である。筆者の担当している学生実験でもアンモニア緩衝液はよく使われ、その臭気のため学生の評判はすこぶる悪い。

ところがにおいというものは不思議なもので、高濃度では悪臭物質でも、低濃度になると好ましい香りになるものが多く存在する。アンモニアはその代表例である。低濃度で発生したアンモニアにより、中華麺特有のにおいが発生するのだ。

【写真】よい香りの秘密は悪臭物質?!
  中華麺特有のよい香りの秘密は、悪臭物質アンモニアだった photo by gettyimages

中華麺の魅力の素【3】美しい黄色

一般に植物は、地中から根を通して窒素分を吸収し、すべてのアミノ酸を植物体内で合成しなければならない。

つまり植物は、内部にフェニルアラニンやチロシンといった芳香族アミノ酸を合成する経路をもっている。