周囲を不快にさせる「バカ笑い」の正体とは…?笑い声を科学する

あなたも声で損をしているかも
山﨑 広子 プロフィール

「笑い声」の正体

そこで本題の「笑い声」である。

統計によると一般的な大人は、1日に約15~30回笑い声をあげる。1回の持続時間は先に書いたように平均1秒。この短い声は、じつは話し声よりも大脳辺縁系へ働きかける力が強い。なぜならば、笑い声は言葉ではなく、話し声に働いている「理性のストッパー」がはずれた声だからだ。

そんな笑い声の「音」は大脳辺縁系を刺激し、周波数の高低、音色、雑音の割合などによって何らかの化学物質を生成させるのである。

人は本当に可笑しいときや楽しいときだけに笑うわけではない。笑いを会話やスキンシップと同様にコミュニケーションの手段としても使ってきた。笑顔は相手に対して敵意がないことの意思表明だし、誰かの笑いに同調して笑うことは仲間意識の確認になる。言葉の代わりに何かを促したり、あるいは制止したり、ときには怒りや悲しみの抑制が笑い声になって出てしまうこともある。

 

笑い声から相手の思いを読み取るのは、脳の経験則だ。理性のストッパーのはずれた「短いが強烈な刺激」は脳に強く刻まれる。そういう笑い声を多種類にわたって何十年と聞いてきた私たち誰もが、笑い声とそこに表出する感情等の相関を脳に蓄積している。

そうした経験則の下、いま聴いた笑い声は瞬時に(もちろん無意識に)データ照会される。そして笑い声の意図するところを推測し、同時に声そのものによる化学物質によって共感や嫌悪や怒りといった気持ちを持つのである。笑い声を聴いてからここまでに要する時間は、わずか約0.5秒だ。

多種多様な笑い声は、その人の感情や思いを伝えるだけでなく、その場の空気や人間関係をも顕現させてしまうものだ。笑い声を聴けば、その人がグループの中でどういった地位にあるかがわかるし、二者の間で交わされる笑いで、初対面同士なのか知人なのか、親しい友人なのかがわかるという実験結果もある。