周囲を不快にさせる「バカ笑い」の正体とは…?笑い声を科学する

あなたも声で損をしているかも
山﨑 広子 プロフィール

多くの場合、声は言葉を届けるために使われる。だから人は言葉の意味、語られた内容に意識を向ける。声に含まれる非言語の音響情報には無頓着だ。しかし近年の研究によって、「声そのもの」は「話の内容や言葉」とは別系統でより速く脳の深部に届き、人の印象を左右することが証明された。しかもその印象は、言葉が12時間後には1~2割しか記憶に残らないのに対して、72時間後でも同じように持続するという。
 
言葉よりも速く声(音)が届く脳の深部とは、大脳旧皮質、その中でも情動脳といわれる大脳辺縁系という部位だ。

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原始の時代からヒトは音によって危険を察知してきた。ひっそりと近づく足音、何かが潜む葉擦れの音、毒ヘビやサソリが出す音、獣の鳴き声、そして危険を知らせたり助けを求めたりする仲間の声などなど。

これらを聞き逃すと命にかかわる。だから目は閉じることができても、耳は閉じられないのである。たとえ眠っていても、耳は外部の音を取り込み続けている。そして、危険を知らせる音は耳から脳幹を経て大脳辺縁系に届き、即座に逃げたり闘ったりするためにアドレナリンなどの神経伝達物質が放出される。
 
このように声の音響刺激は、理性や自分の意識がアクセスできない生命を司る脳の部位で化学物質を作るきっかけとなるものなのだ。脳で作り出される化学物質には興奮剤であるアドレナリンのほか、セロトニンやエンドルフィンやドーパミンなどがよく知られている。

 

そして人間の感情とは、(認めたくないかもしれないが)じつのところ化学物質によって引き起こされている。自分で興奮しようと思っても、落ち着こうと思っても、幸福感に浸ろうと思っても、やる気を出そうと思っても悪あがきに終わる。化学物質によって生じる情動なくして人間は行動できないのである。