DS、Wiiの生みの親“岩田さん”〜任天堂元社長「異才の履歴書」

「発言録」刊行で話題に
渡邉 卓也 プロフィール

誰よりも論理的思考の持ち主だった

『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』を読むと、岩田氏はプログラマー出身ということもあり、極めて論理的な人物だったことがわかる。

論理的というと“他人の気持ちなどを無視して効率的に動く”というイメージがあるかもしれないが、岩田氏に関してはそうではなかった。それどころか相手の気持ちというものすらその論理の中に組み込み、従業員たちの気持ちを推し量ったうえでベストを尽くそう、という考え方なのだ。本書の中には、それを行動に移したエピソードがいくつもある。

HAL研究所の社長になった後、岩田氏は社員全員と面談を実施し、徹底的にコミュニケーションを取ることを始めた。自分がどんな会社で働きたいか考えた時、「ボスがちゃんと自分のことをわかってくれる会社」であることが重要だという結論にたどり着き、実際にそれぞれの社員のことを理解しようとしたのだという。

『MOTHER2 ギーグの逆襲』/写真は任天堂公式サイトより

前述の『MOTHER2 ギーグの逆襲』の開発現場を立て直した際にも、相手に対する論理的な気遣いが見てとれる。

この時に岩田氏は、「いまあるものを活かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。一からつくり直していいのであれば、半年でやります」と、きちんと選択肢を提示したうえで判断を仰いだ。これはもちろん、現場の雰囲気を壊さないため、選択肢を選んでもらったほうがきちんと納得してもらえると判断したためだ。おまけに、どちらを選ばれてもきちんと仕事をこなすつもりだったという。

つまり岩田氏の論理的思考は、人間の不確かで曖昧な感情というものすら考慮していたということだ。しかも、ただ正しいことをするのではなく、自分とは違う考え・感情をもった人間がたくさんいることをわかったうえでベストを尽くす合理的判断、というものになる。

 

論理的に物事を理解しようという性質がおもしろいゲームを生み出し、同時に人の気持ちを汲む考え方になり、さらにそれを会社経営に活かすこともできた。こういった思考法はゲーム以外の他分野にも活かすことができる話であるために、本書はビジネス書としても人気を博しているのだろう。