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小麦はなぜ粉にして食べるのか? 粉が導く"麺"という魅力

進化と食の歴史から小麦麺を読み解く

なぜ小麦なのか、なぜ「粉」なのか

我々がふだん口にしている食品で、小麦粉を使っていないものは少ない。

そう言えてしまうくらい、小麦粉は食品素材としてありふれている。あまりにありふれているため、読者諸氏はあまり小麦粉について考えたことはないのではないだろうか?

ここでは、植物としての小麦が人類の食料資源として選ばれた理由、さらには人類によって品種改良され、小麦粉として食べられるようになった歴史的経緯についてお話ししたい。

【写真】小麦はどのように食料資源となったのか
  小麦はどのように人類の食料資源となったのだろうか photo by gettyimages

小麦の起源

小麦は、被⼦植物、単⼦葉、草本類の仲間であり、トリティカム(Triticum) 属に分類される。

人類によって栽培される以前の小麦という植物は、イラン⻄部、イラク東部、そしてトルコ南部および東部に隣接する地域で進化した植物である。この地域は、標高1000メートルの砂漠地帯である。

その野生の小麦を人類が栽培しはじめたのは約1万年前とされている。

1万年前といえば新石器時代である。小麦を栽培することができるようになって、人類は動植物を追い求めて、土地から土地へと移り住む狩猟社会から、1箇所に居住し、農作物を収穫して生活の糧とする定着農業社会へと、一大変革を遂げることになった。

つまり、「小麦は人類の文明を食の側面から支えた重要な素材である」ということができる。

植物のゲノム

人類はもともと狩猟社会においても、野生の植物を採取して食べていたものと思われるが、なかでも野生種の小麦が栽培用に選ばれた理由は、他の雑草に比べて穀粒が大きかったからだと考えられている。

当初は野生種をそのまま栽培していたと考えられ、それはAAゲノムをもつヒトツブ小麦(einkorn, 学名:Triticum monococcum)、AABBゲノムをもつエマー小麦(emmer, 学名:Triticum dicoccum)であった。