「乙武義足プロジェクト」が進行している。膝がない、腕がない、歩いた経験がない――乙武洋匡氏はそんな身体の「三重苦」と闘いながら、歩行練習に励んでいる。

義足練習見学会修了後、突然のアクシデントに見舞われた乙武氏。帰路の北村マネジャーとふたりきりの車中は、重苦しい沈黙が支配している。乙武氏はゆっくりと語り始めた……。

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北村に送ったメッセージ

北村と二人きりの車中は、沈黙に包まれていた。
一刻も早く家に帰って横になりたい。
しかし、と運転席に目を向ける。

口に出さなくても、北村が誰よりも責任を感じているのは明白だった。私の転倒を防ぐのは、彼の役目だった。

もしこのまま何も告げずにいたら、おそらく彼は自分のことを責め続けるのではないか。家に到着する間際、私は口を開いた。

いつか起こることだろう、とは思っていたんだよね
運転席の北村が「はい」と耳を傾ける。

「義足の練習を続ける以上、避けられないことだと思っていたし、むしろこれくらいで済んでよかったとも思ってる。誰のせいでもないよ。強いて言うなら、ちょっとはしゃぎすぎた俺のせい。北村君が責任を感じる必要はないからね」

北村は少しの沈黙の後、静かに「そうですか」と頷いた。

夜になると、メンバーから続々と私の容態を心配するメッセージが届いた。
腹部の痛みはほとんど感じなくなっていた。痛みがあるのは肩だけだ。頭を強く打ちつけていたら、最悪の事態になっていても不思議ではなかった。どうやら咄嗟の判断で、頭部をかばって右肩を出したようだ。顔には傷ひとつなかったし、メガネも壊れていなかった。

「こちらこそ、みなさんに心配をおかけしてしまい申し訳ありません。いまのところだいじょうぶそうですが、今夜いっぱい慎重に様子を見てみます」

そうメッセージを送ると、不安な気持ちを押しやって眠りについた。

翌朝、目を覚ますと、おそるおそる起き上がってみた。頭や首には痛みもなく、吐き気も感じない。右肩の打撲だけで済んだようだった。

だが、ウッチーとも相談をした結果、1週間後の見学会までは静養を最優先に過ごし、歩行練習やストレッチは行わないことになった。

1週間後再びの義足練習見学会

転倒のアクシデントから1週間、あっという間に2回目の義足練習見学会がやってきた。
昼過ぎにスタジアムに到着し、義足と一週間ぶりの再会を果たす。転倒したときに外装などが大きく破損してしまったため、修理のため遠藤氏に預けていたのだ。

撮影/森清

あれ以来、身体の痛みはとくにない。
意を決して、参加者のみなさんと対面する。前回同様、義足プロジェクトの進行状況を報告し、プロジェクトメンバーとのトークに花を咲かせた。

そしていよいよ、義足歩行のお披露目となった。スニーカーは履くことにした。いくらアクシデントの直後とはいえ、最初から裸足でみなさんの前に登場するのは、私も北村も抵抗を覚えたからだ。

義足を装着し、立ち上がる。