中国・習近平の「次の一手」として「米国債売却」はあり得るのか

「返り血」もある
唐鎌 大輔 プロフィール

また、評価損益との関連で言えば、FRBが利下げ局面に足を踏み入れた以上、先行きの米金利は恐らく下方リスクの方が大きいと考えられる。外貨準備残高を減らしたくない中国からすれば、むしろ保有し続けた方が米国債価格の上昇が見込める局面ではないか。

なお、実体経済への影響も免れないだろう。大量の米国債を売却して元高・ドル安に動いた場合、既存の追加関税の重しとダブルで自国の輸出に効いてくる話になる。減速傾向にある中国としては避けたい話ではないか。

 

「焼け石に水」の割に中国が失うものは大きい

以上のような事情を勘案すれば、米国債売却は今後報じられる可能性が多分にあるものの、中国にとって失うものが大きいように思えてならない。(1)で指摘したように、最大の目的である「不本意な金利上昇で米国経済を痛めつけること」は恐らく中国以外の米国債購入によって阻まれる公算が大きい。

世界で最も深く、広い金融市場である米国債市場では、いくら中国といえども単独の取引で流れを作ることはできず、折角の売却もむしろ「焼け石に水」で終わってしまう可能性が大きい。そうした限定的な効果にも拘らず、中国は自身の外貨準備は相応に失うことになる。米国債売却は「割に合わない戦術」と言わざるを得ない。

また、そもそも論になってしまうが、仮に「不本意な金利上昇で米国経済を痛めつける」という目的が叶ったとして、それが中国にとって何の得があるだろうか。

中国の世界向け輸出の2割程度を占める米国市場を痛めつければ中国経済への悪影響も不可避である。米中貿易戦争はもはや損得を超えた経済合理性以前の争いであるという見方も当然あるが、客観的な得失で考えた場合、中国側が失うものがあまりにも大きく、現実的な一手として検討されるとはどうしても思えない。

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