中国・習近平の「次の一手」として「米国債売却」はあり得るのか

「返り血」もある
唐鎌 大輔 プロフィール

外貨準備はそもそも減らしたくないはず

また、(2)の論点も重要である。過去の本欄への寄稿の中でも議論したことがあるので詳しい説明は割愛するが、中国にはもはや往時ほどの経常黒字はない。2022年には経常赤字に転落するというIMFの見通しもあるくらいだ。

ゆえに、需給面からは元高よりも元安が支持されやすいという実情があるため、中国政府としては無為に外貨準備を減らしたくないという思いがあるはずである。

近年、中国政府が「1ドル=7.0元」の防衛に拘泥してきたのはこれを超えた場合、2015年8月のような制御の難しい資本流出に見舞われ、大量の外貨準備を投じて元安を止める必要性が出てくるからである。

3兆ドルや4兆ドルという分厚い弾薬があれば投機筋の(人民元)売り意欲も生じにくいかもしれないが、2兆ドルを割り込んだ場合、その限りではないかもしれない。現状の3兆ドルでさえ、IMFの試算する外貨準備適正評価(ARA:Assessing Reserve Adequacy)では不十分と言われていることを思えば 、自らこれを減らすような真似は考えづらい(この点は過去記事『中国政府が懸念する「次のチャイナショックは防げないかも…」問題』をご参照頂きたい)。

 

もちろん、米国債を売却してそれ以外の外貨建て資産に配分する選択肢もあるが、(4)で言及したように、流動性・安全性・収益性という観点に照らした場合、現時点で米国債を代替する(しかも外貨準備として相応しい)金融資産は存在しない

次に、中国の米国債売却に絡めて最も指摘される論点が(3)だろう。ピークから減少したとは言っても今年6月末時点では約1.1兆ドルの残高がある。大量に売却した場合、米金利上昇と引き換えに中国が被る米国債の評価損(「返り血」)も軽視できないものがある。

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