中国・習近平の「次の一手」として「米国債売却」はあり得るのか

「返り血」もある
唐鎌 大輔 プロフィール

米国債売却が考えにくい理由

現状の米中間の緊張を踏まえれば、中国の米国債売却を示唆するヘッドラインはいつ浮上しても不思議ではないが、冷静に考えるほど、その可能性は低い

そう考える主な理由としては(1)そもそも効果が見込めないこと、(2)中国にとって外貨準備減少は避けたいこと、(3)米国債売却による「返り血」が小さくないこと、(4)米国債以外の代替資産はそもそも存在しないことなどが挙げられる。他にも理由はあろうが、主なところではこうした論点だろう。

 

最も根本的な問題として(1)がある。昨年来、中国は確かに米国債保有を減らしてきたが、そうした中でも米金利は低下してきた。これは中国がドル売り・元買い介入を行い、米国債保有を減らすような元安局面はリスクオフ局面であることが多く、リスクオフ局面では中国以外の国が米国債を求めやすいという背景があるからだろう。

例えば、前述した図表1は日本と中国の米国債保有残高の推移を比較しているが、前年比で見れば中国は▲730億ドルの米国債保有を減らしているが、日本は+520億ドルも増やしている。これは日本に限ったことではない。

図表(2)に示されるように非居住者(海外部門)の米国債保有残高は米金利の動きとある程度連動している。非居住者全体で見れば、米国債保有残高は昨年10~12月期以降で増加しており、今年に入ってからその動きは加速している。中国単独で売却に動いたところでそれを吸収するだけの地合いが存在しているのである。

米国債売却の狙いは「意図せざる米金利上昇」によって米経済を痛めつけることにあるとすれば、その効果は薄いように思える。

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