2019.08.19
# 中国

大混乱の香港を国際社会は救わない…いま世界が陥る「深刻な危機」

嫌でも武力鎮圧から逃げられない習近平
津上 俊哉 プロフィール

「謀略」が錯綜する香港?

一方で、香港で謀略を弄したがる人々は、実は中国側にもいるのではないか。

いまの香港政府には奇妙な好対照を感じる。1つは万事を北京に指図され、何の当事者能力も持ち合わせないキャリー・ラム長官の姿、もう1つは、相手が女であろうと無抵抗であろうと躊躇も容赦もなく暴力を振るう警察の姿だ。

長官の「木偶の坊」ぶりを目の当たりにすると、警察だって、あれほど暴力的で挑発的な振る舞いが北京の指図なしにできるものだろうかと疑念が湧く。加えて、それは習近平執行部の意を体したものかどうかについても。

というのも、武力鎮圧を余儀なくされるような事態に追い込まれたら、米中対立は激化、経済はいよいよ萎縮、中国の国際イメージは悪化、台湾で蔡英文総統が再選される可能性は増大……というように、習近平執行部は困難が増すだけで、得るものがないと感じられるからだ。

軍用車両を深圳に集結させているいまも、「この威嚇で騒擾が収まってくれますように」とお祈りしているのではないかと思うくらいだ。

 

しかし、執行部が困るがゆえに、事態を悪化させてやろうと目論む反対勢力も中国にいるのではないか。

昨年、日本のマスコミは、まるで「皇帝習近平に逆らう者は誰1人いなくなった」かのように「習近平の権力集中」を報じたが、中国政治はそんなに簡単ではない。

経済、内政、外交……執行部が少しでも失点すれば、あげつらってやろうと虎視眈々の構えの反対勢力が雌伏しているはずだ(だから北戴河の期間中はよけいにやばいのだ)。

リーダーのいない抗議運動と当事者能力を欠いた政府が対峙する危うい香港を舞台に、米国の尖鋭な対中タカ派や民主推進派と中国の反主流派が「謀略」合戦を繰り広げているのではないか……確たる証拠はないが、そんな不安がもたげるのだ。

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