甲子園球場を目指して、多くの球児が故郷を離れた(photo by gettyimages)

甲子園で活躍する強豪チームは他府県の出身者だらけ! 是か非か?

野球留学の実情 沖縄県の場合

沖縄出身者の野球留学は増加の一途

夏の甲子園大会は、ベスト8が出そろい、22日には、令和初の夏の覇者が決まる。

再三言われているように、今年ほど地方大会前から投手の球数制限問題や日程問題がメディアを賑わせ、SNSを通じて有識者からプロ野球OBたちまでが喧々諤々の議論が交わされてきた大会があっただろうか。

 

昨年の選抜大会からはタイブレーク制を導入され、甲子園大会は改革が施されていく時代に突入したのは明らかだが、選手の障害防止のための改善はもちろん、まだまだ議論すべき問題が山積している。

そのうちのひとつが、“野球留学”ではないだろうか。

沖縄県でも、高校進学の際に県外へと流失する中学生が年々増えている。2015年からの3年間で合計約200人、2018年には約70人の中学生が県外校に入学したと言われている。

沖縄の高校野球人気は全国一と言われるほど高く、沖縄県代表の試合があれば会社の業務もそっちのけ、試合中は会社の電話も取らないほどだ。だから、県外へと流出する中学生が増えていることは、県民にとってただ事ではないのだ。

甲子園で優勝経験もある関東の強豪校の監督によれば、「沖縄の子がスタートダッシュするときの足の力、つまり足の指で土を掴むように蹴る力が本土の子と比べても抜群にいい」と評価されており、沖縄の野球少年の運動能力の高さは、野球界では常識となっている。

今回、第101回大会の甲子園の49代表校を見ると、ベンチ入りメンバーの中で、“地元以外の選手”が10人以上にいる高校が17校ある。

地域別に見ると大阪府出身者が計56人(近畿圏の高校を除く)と一番多く、島根県の石見智翠館13人、山形県の鶴岡東7人、福井県の敦賀気比6人、青森県の八戸学院光星5人など、大阪府出身の選手がベンチ入りしている高校は14校におよぶ。大阪の少年野球リーグ、ボーイズ、ポニーのトップクラスの選手は、大阪桐蔭、履正社などといった地元の超強豪校に進むが、セカンドクラスの選手は出場機会を求めて東北などの強豪校に行くのが、十数年から定番となっているのだ。

沖縄県出身選手の場合、今大会は県外の4校で計10人がベンチ入りしており、中でも岡山県代表の岡山学芸館のベンチ入りメンバーには、5人の沖縄出身の選手がいる。その中でも、スーパー1年生の呼び声が高い仲村竜は、186cm、76kgと恵まれた体格で、宜野湾中時代から逸材として騒がれ、岡山県予選では最速140kmを計測するなど世代を代表する投手になると期待されている。

昨年のドラフトを見ても、滋賀学園からDeNAの育成1位指名を受けた宮城滝太投手は沖縄県嘉手納町出身であり、沖縄県出身のプロ野球選手を見ても、ソフトバンクで1999年日本シリーズにも先発した佐久本昌広(2006年引退)は久留米工大付属出身。現役では、2015年北海道日本ハムドラフト1位の上原健太投手は広陵出身、巨人の5番打者大城卓三は東海大相模出身などがいる。今後も優秀な選手が内地の高校へ流出する傾向はもはや止められないだろう。

2017年、硬式の「全日本中学野球選手権大会ジャイアンツカップ」でベスト8に入った浦添ボーイズの親富祖弘也監督(元西武)に、現場の指導者としての意見を聞いた。

「年々、内地の高校へ行く選手は増えていますね。内地への志向も強くなってきているように感じます。内地の高校で野球をやるメリット、デメリットをきちんと教えてあげて、本人の条件さえあえばという感じですかね。ただピッチャーで故障がちな子の場合は、沖縄でやることをすすめますね。まあ、野手でも同じですけど。まだまだ超強豪校以外だと、トレーナーがいるとか、病院、治療院と提携している高校が少ないものですから、だったら一年中暖かい沖縄で治療しながら野球をやるのがいいかと思います」

親富祖弘也氏。宜野湾高校からドラフト4位で西武ライオンズに入団

野球留学する場合、学校側から有望視されることで、選手たちへのプレッシャーも半端ではない。ひと口に内地へ行くといっても、年中温暖な気候で野球をやっていた環境から一転して、厳しい冬を迎えることでケガをするリスクも多くなる。そのため、わざわざ越境入学したのにケガによって脱落感を味わい、惨めな思いをしてしまうのではないかという危惧もある。内地への野球留学は一長一短だ。

1980年代以前の沖縄ならいざ知らず、沖縄尚学が1999年、2008年に選抜大会で優勝、興南が2010年に春夏連覇するなど、県内の高校でも十分に全国制覇できるほどの土壌は整ったのに、なぜ沖縄のトップ選手たちは県外へと行きたがるのだろうか。

「島で孤立している沖縄と違って、内地なら他県のチームとの交流も多いし、多様性は優れていますね。県外の高校のほうが、大学、プロとのラインが強いということも考えているんでしょうね。それに、県内の高校関係者がすべての選手を把握しているわけではありませんから、たとえば、ベースランニング14秒台の子が県内の強豪校からは声がかからず、県外の高校から誘われたということもあります。やはり、県外の有名校から声がかかったことで有頂天になってしまう子もいますので、そこのあたりは冷静に判断するように薦めています」

親富祖監督は、断定せずとも高校までは沖縄でやったほうがいいと考えているようだ。

野球強豪県になったといえども、沖縄県内の各高校のスカウティング活動は内地に比べると、科学的分析から基づいてスカウティングしている高校はまだまだ少ない。見た目の身体能力と実績で判断するのが第一とされ、誰が見ても凄い選手は誰もがスカウンティングする。中学時代に目立った成績を残してなくとも、伸び代といった点をいかに見極めるかが超強豪校のスカウト陣は卓越している。そういった意味でも内地の高校に伸び代が高い選手を一気にかっさらわれることも今後あるのかもしれない。

全国で一番と言われるほど地元愛が強い沖縄なのに、15歳の有望な中学生たちがこぞって内地へと行きたがるのか。この流失が沖縄野球界の問題だけに留まらないことは、沖縄県民であれば誰もが肌で感じているように思えてならない……。