戦前か? 一般人を強制排除した、北海道警「政権への異常な忖度」

明らかに「越権行為」
時任 兼作 プロフィール

「触ったらマズい」の規範が崩壊

道警は、「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」と説明した。しかしながら、今回の聴衆の行動は、同法で「選挙の自由妨害」の一つとして挙げられている「演説妨害」の規定には当てはまりそうにない。

同じような「演説中の発言」についての是非が争われた裁判で、1948年、最高裁判決は「聴衆がこれ(注・選挙演説)を聞き取ることを不可能または困難ならしめるような所為」との判断を示している。

松宮孝明・立命館大法科大学院教授(刑法)は、この判決を踏まえ、「判例上、演説妨害といえるのは、その場で暴れて注目を集めたり、街宣車で大音響を立てたりする行為で、雑踏のなかの誰かが肉声でヤジを飛ばす行為は含まれない」とのコメントを朝日新聞に寄せた。

道警も自らの行為の違法性に気づいたのか、すぐに説明を変えた。「演説の聴衆者同士のトラブルを防ぐための通常の警察活動だった」と強調したうえ、「選挙の自由妨害」については「事実確認中」と転じたのである。

 

だが、これで収まるはずもない。トラブルの兆候がないにもかかわらず、警察官は有無を言わさず市民を取り押さえていたからだ。当の警察中枢からも、当惑の声が上がった。

「まるで親衛隊だ。これまではこうしたことは見られなかった。現場が荒れても、それなりに抑制が効いていた」

警察キャリアのひとりはそう語る。

「その証拠に、右翼への対応は慎重で、騒音レベルの測定までしっかりと行っている。軽々に強制排除や逮捕などはしない。政治や思想犯の捜査では、昔は『転び公妨』をよく使っていたくらいだから、市民に手をかけることの危険性とハードルの高さを警察官は重々承知しているはずだ。それに、派出所や交番でケンカ沙汰の処理をしたことがある者なら、相手に触れたらマズいことなんてわかっている」

転び公妨――警察官が被疑者に突き飛ばされた「ふり」をし、自ら転倒するなどして負傷を装い、公務執行妨害罪(公妨)や傷害罪などを適用し、被疑者を現行犯逮捕する行為のことだ。

学生運動が盛んだった時代に頻繁に用いられた転び公妨は、のちに別の事件捜査でも使われるようになり、問題視された。現在では多くの警察官が教訓として意識するようになり、結果、逮捕に際して相手に手をかけることにも慎重になったとされている。

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