「本物の聖地」化した京アニの舞台…放火事件から1ヵ月後の今を見る

もはやファンだけが集う場所ではない
岡本 健 プロフィール

『けいおん!』聖地を訪ねて

このように、2000年代後半ごろから、現在の情報環境の元となる様々なプラットフォームが整備されていき、アニメファンの作品の遊び方も、現実と虚構をない交ぜにしながら、情報発信や表現を行うようなあり方が登場してきた。聖地巡礼も、アニメに描かれた背景を探し出して実際に訪れたり、アニメに登場する物品を特定したりするため、やはり現実と虚構をない交ぜにした遊び方の一つと言える。

そうしたファンによって新たなコンテンツの遊び方が開拓されていく中で、京都アニメーションが制作した高クオリティのアニメ作品は、強い支持を集めていった。

私は、今回の事件後に『けいおん!』の聖地である豊郷小学校旧校舎群(滋賀県犬上郡豊郷町)を学生たちと訪ねた。豊郷町は、町のウェブページに町長名でお見舞いメッセージを掲載し、地域としても今回の事件に哀悼の意を示していた。

『けいおん!』の聖地、滋賀県・豊郷小学校旧校舎群の校内にも献花台が置かれていた/筆者撮影

豊郷小学校旧校舎群には、献花台が設置され、そこには数多くの花束やメッセージが置かれていた。アニメの背景に描かれた教室の黒板や、置かれている巡礼ノートにも、たくさんのメッセージが寄せられていた。

地域の商店主に話を聞いても、今回の事件に衝撃を受けていることがよくわかった。聖地の現状を見た学生たちは、「自分たちにも何かできることはないか」と言ってくれた。

今、私は学生たちと「京都アニメーション応援プロジェクト」を結成し、近畿大学のオープンキャンパス(8月24日、8月25日)で実施する募金イベントの準備中である。近畿大学東大阪キャンパスは京都アニメーション作品『Free!』の中で、登場キャラクターの松岡凛が通う高校「鮫柄(さめづか)学園」として描かれたご縁もある。

 

インターネットやSNSは、憎悪や憎しみも拡大するが、楽しいことや美しいことなどの人間の「良い面」も増幅していく。聖地巡礼やコンテンツツーリズムも、そこから生まれた一つの文化である。令和の時代に求められるのは、こうした情報環境をいかに活用して、社会にとって、人間にとって「良きもの」を創出していけるか考え、実践することだろう。