「本物の聖地」化した京アニの舞台…放火事件から1ヵ月後の今を見る

もはやファンだけが集う場所ではない
岡本 健 プロフィール

次に、『らき☆すた』(2007年)の聖地となった鷲宮町(現在は久喜市)や『けいおん!』(2009年)の聖地になった豊郷町では、アニメファン、地域住民が協働して、グッズ制作、販売、イベントの企画、実施が行われ、ネット上で話題になるとともに、マスメディアにも盛んに取り上げられた。

『らき☆すた』の聖地、埼玉県・鷲宮で行われる「土師祭」の様子/筆者撮影

アニメファンは、放送されたアニメを見て、その背景を特定してインターネット上にその情報を発信した。そうした聖地の情報を見て、他のファンが聖地巡礼に訪れる。従来の観光との大きな差異は、この観光プロセスの中に、旅行会社や観光協会といった、これまで観光を成立させる際に重要な役割を果たしていたアクターが介在していないことだった

言葉遊びではない、本物の「聖地」に

現地調査に行ってみると、聖地巡礼をきっかけに、アニメファンと地域の人々の間で交流が起こり、グッズやイベントのアイデアが創出されていく様子が見られた。また、アニメファンの中には、地域で生きがいを見つけ、何度も通い、移住してしまう人までいた。地域住民の中には、突如起こったアニメファンの来訪に驚きながらも、地域住民にとっては何の変哲もない風景や地域文化を大切にしてくれる旅行者の様子に触発され、自らが住む地域を見直す人が出てきた。

つまり、「聖地」は単なる言葉遊びでは終わらなかったのである。アニメが人と人、人と地域を結びつける役割を果たし、そこは多くの人に大切にされる場所、まさに「聖地」となっていた

 

さらに、茨城県大洗町の『ガールズ&パンツァー』(2012年)、静岡県沼津市の『ラブライブ!サンシャイン!!』(2016年)、佐賀県の『ゾンビランドサガ』(2018年)などの事例で、アニメファンによって聖地巡礼がなされると共に、地域やコンテンツホルダーも「聖地」を意識した展開がなされてきた。