『けいおん!』の聖地「豊郷小学校旧校舎群」内の黒板/筆者撮影

「本物の聖地」化した京アニの舞台…放火事件から1ヵ月後の今を見る

もはやファンだけが集う場所ではない

私と京アニとの結びつき

令和元年7月18日——。京都府宇治市にある京都アニメーションが放火されるという事件が起こってしまった。新しい時代「令和」が始まった祝賀ムードが少し落ち着きを見せ始めたかという矢先の大事件に、筆者にも翌日から新聞やテレビ、雑誌の取材依頼が寄せられた。

正直に言って、当初は取材を受けるのを躊躇した。事件の全容がわからない状態で、推測で物を言うことは避けたかったし、何より自分自身が混乱していたからだ。

建物の焼け跡が、当時の火災の激しさを物語る/筆者撮影

筆者は2008年3月ごろから、「アニメ聖地巡礼」について研究してきた。2012年3月には、アニメ聖地巡礼について研究してきたことを博士論文としてまとめ、観光学の博士号を得て大学教員になった。博士論文を書籍化した『アニメ聖地巡礼の観光社会学』(法律文化社)の「あとがき」も、実は京都アニメーション近くのマクドナルドで書いた。本書は、令和元年7月7日に観光学術学会「学会賞」の著作賞を受賞したばかりだった。

研究を始めて11年近く経つが、その間、様々なアニメ聖地にお邪魔して研究を続けてきた。『らき☆すた』の埼玉県・鷲宮町(当時)、『涼宮ハルヒの憂鬱』の兵庫県・西宮市、『けいおん!』の滋賀県・豊郷町、そして、『氷菓』の岐阜県・高山市……。これら京アニ作品の聖地は、自分自身の研究の履歴であり、その場で出会ったアニメファンや地域の人々との思い出の場所だ。今なお、現地の風景とアニメ作品のイメージが鮮やかに蘇ってくる。

 

大学に勤めてからも、京アニ作品とのお付き合いは続いた。京都文教大学は京都府宇治市に立地しており、京都アニメーションの方とは一度お仕事をご一緒したことがある。その次に勤めた奈良の大学では、『境界の彼方』の舞台が奈良だったため、コンテンツツーリズムの取り組みをさせていただいた。

今は近畿大学に勤めているが、非常勤講師として京都の大学に自動車通勤する際には、木幡駅近くの「京アニ&Doショップ!」の前を毎週通る。ほぼ毎回、店を訪ねてきたと思しきアニメファンを見かけた。中には外国人客の姿もあった。