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ドイツ銀行大リストラを招いた、いまどきの「銀行と金融」の致命的弱点

「ふつうの銀行」に戻れるか?
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

連鎖しすぎていて潰せない 

バランスシートには引き続き巨大なリスクが残る。

ドイツ銀行の開示によれば、2018年末時点で抱えるデリバティブの想定元本(実際に受け渡しされるキャッシュフローを計算するための、名目上元本)は43.5兆ユーロ(5000兆円超。ただし、金利や為替デリバティブを除くと2.1兆ユーロ)に上る。

実にドイツGDPの10倍以上だ。

 

もちろんこれには売り・買い両方のポジションなどが混ざっているので、それらを相殺した純(ネット)リスクははるかに小さいという見方もできる。

でも、なら安心か、というと、そうではないと思う。

ポジションを相殺できるという想定は、あくまで契約が問題なく実行され、スムーズに決済されるというのが前提だ。

言い換えると、5000兆円という想定元本は、ドイツ銀行がそれだけ世界中の銀行やノンバンクと取引をしており、世界中に「カウンターパーティー(取引相手)リスク」を引き起こすおそれがあるということだ。

リーマン危機を思い起こせば、その怖さがわかる。

あの時は、世界の金融機関がお互いに短期資金を融通するCP(コマーシャルペーパー、企業の発行する無担保約束手形)やレポ(証券を担保とする短期貸付)というプロ同士の短期市場で、取引相手の信用力を懸念する貸し渋りが起き、市場の資金があっという間に干上がって連鎖倒産リスクを招いた。

リーマン危機でよく聞かれた言葉が、 “TBTF” (Too Big To Fail)「大きすぎて潰せない」だった 。でもAIGなどの救済は、実際には “TCTF” (Too Connected To Fail)「連鎖しすぎていて潰せない 」だったのだ。

世界中の金融機関がドミノ倒しとなることが、最悪のシナリオだったからだ。

ドイツ銀の世界経済との結びつきを考えると、まさにTCTFだろう。

「経済の金融化」と「金融機関のトレーディング化」

ドイツ銀行の迷走は、「ふつう」でなくなった今どきの金融システムの氷山の一角かもしれない。

イギリスのエコノミスト、ジョン・ケイは、その名著『金融に未来はあるか(Other People’s Money)』で、今の経済システムの「金融化」を鋭く指摘している。

例えば、過去数十年間の世界経済と金融産業の成長を比べると、金融だけが突出して成長しているが、その成長がどこから来ているかを見ると、それはトレードの増加だ。しかも、そのトレードの大部分が、実経済には貢献しない金融機関同士によるものだ。

その中でも伸びているのが上述のデリバティブ。

デリバティブは、株や債券、為替などの価格をもとに作られているが、今やデリバティブ市場は、その元となる資産の数十倍にもなる。

金融市場が実体経済よりはるかに大きくなると、景気が悪くなったから市場がクラッシュするのか、それとも市場がクラッシュするから景気が後退するのか、判然としなくなる。

大きすぎる金融システムは、膨らんだ風船のように危なっかしい。

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