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ドイツ銀行大リストラを招いた、いまどきの「銀行と金融」の致命的弱点

「ふつうの銀行」に戻れるか?
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

それによると、行内のグローバル化推進派だったヒルマール・コッパー氏が頭取になり、94年に「国際的な投資銀行を目指す」と宣言したことが大きな転換点だった。

英米に追いつくための人材が足らず、多額の資金を投じてリソースを買い集めた。

1989年の英国モルガン・グレンフェルドに続き、1998年には全米8位のバンカーズトラストを買収。国際的な投資銀行部門は、メリルリンチから引き抜いたグループが中心となって立ち上げた。

 

彼ら外来のバンカーたちは、デリバティブ(株や債券などの価格変動を元にした金融派生商品)など最新の金融商品を取り揃えるとともに自己勘定でもトレードを行い、莫大な利益をあげた。

2000年代にはドイツ銀行のデリバティブ取引額は世界4位に成長し、頭取より高い報酬を手にするスター・トレーダーも現れた。

2002年に外来組のジョセフ・アッカーマン氏が、非ドイツ人(スイス人)として初めて頭取となると、取締役会の合意に基づく従来の経営スタイルから「スターCEO」が権限を握る米国型経営(過去記事<最大5000倍!社長と従業員の「報酬格差 」が止まらないカラクリ>を参照されたい)へと舵を切った。ドイツ銀のウォール街型投資銀行への転身が完了したのだ。

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しかし、ニューヨークやロンドンのトレーダーが貪欲に利益を追求する間に、フランクフルト本店によるリスク・コントロールは効かなくなっていった。

それはリーマンショック後に大きな「つけ」となってのしかかることになる。この変化はドイツ銀行のバランスシートに顕著に現れている。

コッパー氏の就任前には3000億ユーロ程度だった資産が、それから15年もしない2007年には、世界最大級の2兆ユーロに急膨張した。

ピークだった2006年のROE(資本が生み出す利益の率)は20%近くに達したが、その利益の7割以上が変動の激しい投資銀行部門からのもので、リスクも急速に増大した。

そして今――。

リストラ費用を考慮すると、今年のドイツ銀の決算は5年連続の赤字となりそうだ。

自己資本が更に減って自己資本比率が規制の基準値に届かなくなるおそれも指摘されている。

そもそも、「ふつうの銀行」に戻るといっても、今のECBのマイナス金利政策のもとでは、銀行の通常業務さえ振るわない。

その上に住宅ローン担保証券の不正販売に始まって、Libor(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作、ロシアマネーの違法な資金洗浄に関わっていた疑惑など、相次ぐ不祥事の発覚。巨額の罰金や訴訟費用もまだかかりそうだ。

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