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ドイツ銀行大リストラを招いた、いまどきの「銀行と金融」の致命的弱点

「ふつうの銀行」に戻れるか?
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

「トレーディング文化」に染まった投資銀行

一方、「投資銀行」の仕事は資金を必要とする顧客の手伝いをすることであり、預金に頼らず資金を動かす。

例えば、企業の債券・株式の発行や販売のサポートなどがそれで、サービスの種類や規模に応じて手数料を稼ぐ。

つまり、本来の投資銀行は資金の需要家と投資家をマッチングさせる仲介業(ブローカー)なのだ。もともと個人向けではないが、証券業でもある。

仲介モデルでは、資金を調達するのは顧客企業で、リスクを取るのは投資家だ。

取り扱うお金は、素通りする「他人のマネー」である。他人のマネーはバランスシートに載せる必要もないし、自分でリスクを取る必要もない。

このもともとの事業モデルの違いが、「ふつうの銀行」に比べるとリスクに無頓着になりがちな投資銀行の企業文化の根底にある。

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一方で、預金の束縛がない投資銀行の強みは、スケールの大きなマネーを迅速に動かせることだ。

歴史的に欧州の「マーチャントバンク」や米国の「インベストメントバンク」などの投資銀行が台頭したのは、産業革命以降のこと。

鉄道を始めとするビッグ・プロジェクトが次々と持ち上がり、ちまちました地方銀行の預金を当てにしていたのでは追いつかないような大きな資金需要が生まれた時代と重なる。

でも仲介業者だから、もともと手元に大きな資金はない。どうやって顧客を掴むのかというと、その武器は、情報と頭脳だ。

 

グローバル投資銀行には金融市場や産業に精通したバンカー達が、顧客企業に債券や株式の発行やM&A(企業合併・買収)などのアドバイスを行っている。筆者が個人的に出会ったバンカーの顔を思い浮かべても、極めて優秀で仕事のできる人が多い。

しかし、もともと「仲介業」として顧客サービスが基本だったはずの投資銀行は、レーガノミックスによる金融緩和と自由化の波が押し寄せた80年代から変質していく。

商業銀行と投資銀行の分離を定めた「グラス・スティーガル法」が骨抜きになっていくのもこの頃だ。

金融市場が拡大し競争も規制も厳しくなっていく中で、それまでのパートナー経営から株式を公開し、規模を拡大する投資銀行が相次いだ。なかでも新しい金融商品のトレードに強いプレーヤーが大きくなり、そうでないところは脱落していった。

やがて投資銀行は顧客の取引だけでなく、株式公開などで潤沢になった自己資金で自らのためのトレード(自己勘定取引)を積極的に行うようになり、トレード利益が全社利益の多くを占めるようになる。

スター・トレーダーが生まれ、彼らが社内で発言力を持つにつれ、より大きな利益のためにより大きなリスクを取りに行く「トレーディングの文化」がウォール街で幅を効かせるようになっていった。

それを象徴したのが、80年代の「ジャンク債」だ。

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