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大学無償化政策に透ける、エリート大卒層の「上から目線」

「大卒至上主義」の押し付けでは?

「非大卒の人々」を軽視し続けるエリート

今の日本人のうちで、大卒学歴をもっている人たちがいったい何%いるか、あなたは知っているだろうか?

国内ビジネスに関わるビジネスパーソンであれば、知っておくべき数字だろう。だが、正確に把握している人は意外に少ない。日本では学歴でセグメントを切り分けてものごとを説明することが、とかくタブー視されがちだからだ。

このグラフは、1996~2035年の40年間の日本人の学歴比率を示したものである(20~59歳)。ここでは大卒とは短大・高専、四年制大学、大学院進学者を指し、非大卒とは中学、高校、専門学校卒業者を指す。なお、学歴の男女差は近年小さくなっているので、男女は合算して示している。

これをみると、今年(2019年)の大卒比率は44.7%で、これが冒頭の問いの答えだ。ということは、現状では、多数派は非大卒層のほうだということになる(55.3%)。しかも、これは成人式から還暦までの現役世代だけをみた数字だ。大卒比率がさらに低い高齢世代まで含めると、まだ日本人の7割近くが非大卒だということになる。

このグラフからは、21世紀初頭(2001年)には大卒層が31.6%しかいなかったこともわかる。その後は大卒比率が増えるトレンドが一貫しているものの、その速度は緩やかだ。現在の高卒後の短大・大学進学率は57%前後だが、人口の少ない少子化世代なので、新規参入により全体の大卒比率を上げる効果は小さい。大卒層が日本人の半数を超えるのは、およそ10年先の2030年になる見込みだ(推計値50.6%)。

ところが、わたしたちは「今の時代、もはや大学進学は当たり前だ」と考えがちだ。政治家、官僚、経営者・役員、コンサルタントやアドバイザー……上層エリートは一流大学卒ばかりである。

そういう人たちの日ごろの人間関係は、大卒層中心で構成されている。結果、大卒エリートは、今の日本の労働力の半数強を占める、非大卒層の人生設計や暮らしぶりを実感しにくい。

このような、大卒/非大卒両者の関係の希薄化と相互理解の断絶が、私が指摘してきた「学歴分断社会」だ。

そこでは、地域コミュニティを支え、福祉や流通などのサービスを滞りなく動かし、建築や土木の過酷な現場を担い、ものづくりを継承し、子どもを多く生み育てているのは、大学進学せずにキャリアをスタートさせた人たちが大半だ。

それゆえに、これからの日本社会に不可欠の「若年非大卒層」のプレゼンスを強調すべく、私は「軽学歴」の若者たちという意味合いで、かれらをレッグス(LEGs: Lightly Educated Guys)と呼んでいる。

安倍長期政権が進めてきた政策は、大企業の負担を減らし、都市部で働く大卒層の「働き方改革」を唱える一方で、若い高卒就職者に対して、とかく不親切で無配慮なものばかりだった。

子育て中や育児後の女性の就業支援、シルバー人材の活用促進、職場のAI化の進行、外国人労働者の受け入れ拡大……これらの政策・施策が進むにつれ、レッグスたちの居場所は徐々に侵食されていく。

もちろん、かれらに対して意図的に圧力がかけられているわけではない。しかし、社会の方針を決定する上層エリートの目配りが十分ではないために、レッグスたちが政策の網の目から抜け落ちている現状がある。