筆者撮影

また赤字? 阿波おどり「民間委託」で開催も、消えない疑問と不安

失敗の検証が、ずさんすぎる

徳島夏の風物詩「阿波おどり」が例年通り8月12日から開催された。昨年の大騒動から1年。今年は特に混乱の様子も伺えず、順調に運営されているようにも見えた。

しかし、大型の台風10号が直撃し、後半2日間は中止に。その上、運営をめぐる問題点は依然として全く解消されぬままで、見通し良好とは決して言い難い現実がある。現地での取材をリポートする。

 

運営問題は未解決のまま

8月12日、22時を少し過ぎると、阿波おどり振興協会に所属する有名14連の総勢1500人が踊り込んだ。圧巻の総おどりに観客は魅了され、歓喜の声が上がる。踊り子たちには充実の表情が浮かんだ。阿波おどり最大の名物「総おどり」が2年ぶりに復活した瞬間だった。

阿波おどり振興協会の山田実理事長は、「やはり達成感があります。お客さんにも立体感のある桟敷席から見ていただけてよかった」と安堵の表情を浮かべた。

2年前に筆者が報じた「4億円の赤字」問題に端を発する、阿波おどり運営をめぐる紆余曲折。阿波おどりの象徴ともいえる「総おどり」は昨年、実行委員会の委員長を務めた遠藤彰良市長の一存で中止に追い込まれる憂き目にあった。

遠藤市長はそれまでの主催者であった市観光協会(徳島新聞社と共催)を「運営能力なし」と決めつけて破産させ、自らが実行委員長として運営責任者に就任した。

そして、市観光協会の存続を求めていた阿波おどり振興協会を目の敵にした。市長と実行委員会は、「改革」と称して「総おどりの中止」を一方的に決め、踊り子と激しく対立。結果、振興協会は桟敷のない道路で独自に総おどりを強行することとなり、ヒートアップする両者のにらみ合いは全国的な注目を集めた。

それだけに、今年の「有料演舞場での総おどり復活」は、踊り子たちにとっては待ちに待った「本来の阿波おどりの復活」というべき快挙と言えるだろう。

ところが、昨年勃発した阿波おどりそのものの運営問題は、実はなんら解決していない。山田氏はこう憤る。

「昨年の阿波おどりは、発表されているだけで3000万円近い赤字でした。一昨年に黒字で運営した観光協会に対して、市長は『累積赤字は観光協会の責任だ』と言って破産させたのに、自分が責任者となって運営したら、赤字になったわけです。

それなのに、運営に関する検証や説明が全くなされていない。そのことを指摘したら『(昨年のことを追及するのは)不毛だ』と言われたんです」

総おどりの復活で、外形的には以前の形を取り戻したように見える阿波おどりだが、依然として火種がくすぶっている状態なのだ。

「その後も、今日に至るまで遠藤市長からはお詫びの一言もない。会う機会を作ってもらおうにも、市長は『実行委員会の要請があれば会う』と言い、実行委員会は『要請はしない』と言って逃げ回るばかりでした。

昨年失った信頼関係を改善しようともせずに、『私はもう関係ありません』と言わんばかりの態度には、怒りを覚えます。よくメディアの方から『今年は不満や問題はないのか』と聞かれます。私の答えは『あるけども、今は言わない』ということです」

こうした状況が続いていたことから、振興協会は今年の阿波おどりへの不参加も検討したという。しかし、「踊り子たちの『踊りたい』という気持ちを考えると、不参加にはできませんでした」と胸の内を明かした。

総おどりを成功させ取材に答える山田理事長(筆者撮影)