2019.08.31
# 格差

日本人は知らない、いま世界中で広がる「強制労働」の悲しい現実

「対岸の火事」では済まされない
夫馬 賢治 プロフィール

「ラナ・プラザ崩落事故」の教訓

アパレル産業での「劣悪労働」問題は、いまに始まったことではない。20年前には、東南アジアのナイキの下請スニーカー工場で、労働者が悲惨な環境で働いていたことが発覚し、世界的な不買運動につながった。

今でも、インドやバングラデシュでの縫製工場では、安全性が確保されていない労働現場で、長時間低賃金労働されていることが横行している。

その中でも近年大きな注目を集めたのは、2013年4月にバングラデシュの首都ダッカ近郊で発生した「ラナ・プラザ崩落事故」だ。

photo by iStock

商業施設ビルだった「ラナ・プラザ」には当時、多くの縫製工場が入居しており、欧米や日本企業ブランドの洋服を数多く生産していた。およそ4,000人が働いていたビルが突如、崩壊。死者1,130人以上、負傷者2,500人以上、500人以上が行方不明という史上最悪の事故となった。

ビルは8階建てだったが、5階以上は違法増築。そこで数千台のミシンが動いていた。さらに、事故前日には、ビル壁の亀裂が指摘され使用中止の意見も出たが、ビルオーナーは無視を貫いた。こうして、巨大な労働災害事件が起きてしまった。

 

「ラナ・プラザ崩落事故」を機に、劣悪労働問題は「人権問題」と言われるようになってきた。ちょうど直前の2011年には、国連人権理事会で、「国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)」が採択されたばかりだった。

そこには労働基準を整備する政府だけでなく、企業にも事業を通じた人権侵害を防止する責任があると定められており、ラナ・プラザ崩落事故以降、急速に企業にとって「人権」という言葉が浸透していくこととなった。

2015年には、イギリスでは「現代奴隷法」というショッキングな名称の法律も制定され、英国に事業所のある大企業には、サプライチェーン上での人権侵害を防ぐ法的義務が制定。その後、フランス、オランダ、オーストラリア、米カリフォルニア州でも同様の法整備がされていくことなる。

これら労働分野の人権法が対象にしているのは、「強制労働」と呼ばれる行為だ。

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