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香港デモ「空港殴打事件」報道から見えてきた中国・習近平政権の思惑

これはアジア全体の危機かもしれない

青年はなぜ香港に行ったのか

香港で続くデモが、8月13日夜、ついに一線を越えた。香港国際空港で、二人の殴打される中国本土の犠牲者が出たことである。

その生々しい映像は世界中を駆け巡ったが、珍しく中国本土でも、中央広播電視総体(CCTV)などが、いち早く映像を流した。この一件から見えてきた中国側の思惑について述べたい。

 

まず、中国国務院(中央官庁)香港マカオ弁公室の徐露颖報道官が、14日に緊急声明を発表した。

「13日晩と14日深夜に、香港国際空港で驚くべき暴力事件が発生した。空港に不法に集まった一部の急進的な暴力分子たちは、二人の内地の住民に対して、厳重な傷害を与えた。

13日20時頃、彼らはまず、個人的に香港マカオの通行証を保持して香港空港で知人を迎えに出ていた徐氏を監禁して身動きを取れなくした上、レーザービームを目に照射して殴打を続け、昏睡状態に陥れた。救急車が空港に到着し、彼らを押しのけて救助した。最後は警察の力も借りて、4時間近くも経って、ようやく徐氏は救助されたのだ。救助する間も、彼らは一人の警官を取り囲んで殴り、警棒も奪ってしまった。

14日深夜、急進的な暴力分子は、『環球時報』の記者である付氏をニセモノの記者と疑って、両手を締め上げて殴打し続けた。付氏は多くの傷を負った。入ってきている情報によれば、徐氏と付氏の二人は、いまだ入院中だ。われわれはこの種のテロ行為に近い行動に対して、強烈な譴責を示すとともに、ケガをした内地の同胞と香港警察に向けて、深い慰問の意を表する。

ここ連日、香港の急進的な暴力分子は、法律的、道徳的、及び人間的なボトムラインを、完全に越えた。彼らは公衆の面前で、公然と厳重な暴力犯罪行為に及んだのであり、衝撃的で慄然とさせられる。彼らの行為は、法治を極端に蔑視するものであり、香港の国際的な心象と、広大な内地の同胞の感情を、著しく損ねるものである。

この種の極端で悪辣な暴力犯罪行為に対しては、必ずや法律に基づいた厳罰が下されるだろう。われわれは決然と、香港警察と司法機関の果断な法の執行、厳正な司法、そして一刻も早い違法行為を行う犯罪分子を法によって摘発することを支持する」

以上である。中国側は怒りに満ちた物言いをしているが、殴られた場面の一部は、世界のメディアが映像を流しているから、現場の状況については、ほぼこの通りだろう。

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その上で、第一に深圳に住む青年・徐氏についてだが、中国政府の発表では、「知人を迎えに香港国際空港に行った」としている。この点が、私には疑問だった。

香港国際空港がデモ隊に囲まれて騒然となっていることは、中国国内でも、すなわち隣の深圳でも仔細に報道されている。そんなところへ、わざわざ人を迎えに行くだろうか?

深圳から香港国際空港へ行ったのだったら、おそらく深圳側の福田駅か深圳北駅から高速鉄道に乗って西九龍駅まで行って、そこから近くの九龍駅まで1㎞近く歩いて、空港行きのモノレールに乗ったことだろう。だがこのいずれの駅や車内でも、重ねて注意を喚起しているはずである。それを押しのけて行くというのは、相当勇気がいる無謀な行為である。

しかも香港国際空港では、約400便の飛行機の発着がストップしていたのである。もちろんそのことも、スマホを開ければ逐一、情報は入っていたはずだ。特に、深圳側から香港側に「入境」したとたん、香港その他のメディアの「自由な報道」も、すべて入ってくる。それでも徐氏は、到着する予定のない知人を迎えに行っていたというのか?

私は、あくまでも可能性の一つに過ぎないが、ひょっとしたらこの青年は、デモに参加しに行っていたのではないかと思う。

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