SDGs後進国といわれる日本ですが、サステナブルな暮らしにつながる活動は日本にもたくさんあります。今回は、都心での農的な暮らしを現実的に提案する〈アーバン・ファーマーズ・クラブ〉をご紹介します。

都市型農的ライフスタイルは
新しい未来の始まり

渋谷駅のほど近くに、可愛らしい小屋のようなものが見える。のぞいてみると、やわらかく瑞々しい野菜の苗が植わっていた。「街づくりの一環として、暗渠だった渋谷川を復活し、沿道を遊歩道にするときに、この大型プランターを設置したんですよ」と、アーバン・ファーマーズ・クラブ(以下UFC)代表の小倉崇さん。

UFCは、渋谷や恵比寿といった都心で農活動をするNPO団体だ。ときには街づくりを手がけるディベロッパーやビルマネージメント会社、野菜を使うメーカーなどと協力して、ユニークな試みをしている。始まりは、約5年前、渋谷の風俗街で農作業を始めたこと。

今は渋谷ストリームや恵比寿ガーデンプレイスなど4ヵ所に畑がある。「働いている場所に畑があったらいいよね」という思いつきで始めた恵比寿のビルの畑は、主にそのビルのテナントの人たちが世話をしている。

「昔から漠然と、農的な暮らしをしたいなと思っていたんです。でも忙しいし、土地もないし、と後回しにしていて。ところが東日本大震災が起きて、街から食料も水も消えたとき、東京は物流が途切れたら生産性がないんだと気付いて愕然とした。自分の食べ物は自分で作らなくては、と強く思ったんです」。

そんなタイミングで気が合う若き農家と出会った小倉さんは、週に一度の頻度で彼の畑に通い始めた。農薬や肥料に頼らずに野菜を作ることがいかに大変かを思い知ったが、その知識を生かす機会がやってくる。

「渋谷の風俗街にあるライブハウスから、何か一緒にできないかと相談を受けたんです。ならば、畑をやりませんかと」。

ウィークエンドファーマーズと名付けたこの活動は話題になり、農業高校の生徒から主婦、ビジネスマンまで1年に200人もの人が見学に来たという。

渋谷ストリームの大型プランターには季節の野菜を、また川沿いに並べた麻袋のプランターにはオーガニックコットンを定植。「2年ほど前、農家からもらった種がすくすく育って、今は200株くらいに増えました。種をメンバーにシェアして各自が自宅で育て、持ち寄ってここに植えるんです。こうして増やしていけば、いつか渋谷メイドのオーガニックコットンTシャツができるかもしれない。それを見たら、Tシャツ1枚買うことに対しての意識も変わると思いませんか」

「みんな最初は、こんな所で食べ物が栽培できるわけないよねって思いながら来る。ところが、できた野菜を食べてみたらおいしいな、ここでできるなら、うちでもできるんじゃないかな?と思うんですね」。

このときに出会った人たちが、UFCのコアメンバー。現在は300人ほどの一般メンバーが協力しあって、都心での農活動をサポートしている。もちろん失敗もある。虫が大発生したり、収穫直前にネズミにごっそり食べられてしまったり。

「みんなのがっかりした顔が脳裏に浮かんで、心底、落ち込みましたよ。でも一方で、これが農業だ、野菜ができるってすごいことなんだって伝わった」。

東急プラザ表参道原宿6F「おもはらの森」では、キユーピー、伊藤園、東急不動産といった企業と連携し、「やさいの森」プロジェクトを進行中。

農的な暮らしをすることで、人の意識は確実に変わる。キッチンでハーブを育てるくらいの小さな単位で十分。“自分ごと”と感じることから、野菜の価値や食、生き方について考え始める。

だから、都市生活者が、もっと気軽に自由に農業にアクセスできる機会を増やすのが、UFCの活動意義。近所の幼稚園を招き、一緒に育てた野菜でサラダパーティをしたり、屋上があるテナントの人たちを巻き込んで畑を作ったり。そんな小さな一歩から始まる未来は、きっと明るい。

田んぼ部や味噌部、いちご部など、個々にテーマを決めて活動しているメンバーも。

アーバン・ファーマーズ・クラブ
npo.urbanfarmersclub@gmail.com
urbanfarmers.club

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Design:Kosuke Shono Photo:Koichi Tanoue Text:Shiori Fujii