日本人が日韓対立や原発問題で同じ議論を繰り返す「根本理由」

最も警戒すべき「ナルシシズムの病理」
堀 有伸 プロフィール

日本社会を苦しめていること

羨望が対人関係の場で働くときに、たとえ直接的な相手の破壊が目指されなかったとしても、それが「感謝することなく、報酬を与えることもなく、仕事を押しつける」という形で現れることがある。

ある人の労働が、何らかの生産的な価値を有していること、また公共に貢献できる内容であると認識されることで、報酬を支払う側のナルシシズムの発達が未熟な場合に、その無意識的な羨望が刺激されてしまう。

先日吉本興業の件が話題となった時に、一部の芸人への報酬が極端に低いことが話題となった。

〔PHOTO〕gettyimages
 

それも含めた日本の労働環境では、「自分ができない良い仕事をしてくれた人に、きちんとした報酬を支払わないで逆にいじめる」という、羨望に導かれた行動が出現してしまう場合がある。

個人が小さくない報酬を受け取るのに反対する理由を、集団主義的な社会で探すのは極めて簡単である。

その個人の、いろいろと徳が足りない点を指摘すればよい。この過程は無意識に行われ、「立場の弱いものを保護して教育している」という都合のよい自己愛的な幻想が、意識的な思考の全体を占めてしまっていることが少なくない。

しかし報酬を支払う側が目先の利益にこだわることが保護される一方で、個人の権利を認め、契約や法律できちんと守る習慣が希薄であることが、長期的にみて日本社会を苦しめている点があるだろう。