日本人が日韓対立や原発問題で同じ議論を繰り返す「根本理由」

最も警戒すべき「ナルシシズムの病理」
堀 有伸 プロフィール

同じような議論の展開がくり返されている

最近の社会問題について、たとえば原発問題や日韓関係の問題を見ていると、本来は別のテーマであるのにもかかわらず、同じような議論の展開がくり返されている印象を持つ。

現代日本的な保守とリベラルが互いに攻撃的な議論を展開するばかりで、議論が平行線のまま何らかの結論に至ることはない。議論が成立するためには、どんなに論戦が激しくなったとしても、最低限相手を尊重する姿勢が必要である。

しかし私の見るところ、両陣営ともに、何らかの屈辱的な感情を相手に抱かせた上で一方的に自分の主張を述べる、そのようなナルシシスティックな語り方が目に付くようになっている。

未熟なナルシシズムの持ち主は、自分と少しでも対立する所のある存在を許容することができず、空想的な範囲内であってもその対象を自分の意識から消滅させることを願ってしまうからだ。

そのような論争から生産的な展開を期待することは大変難しい。他者と共存し、自分のコピーではない新しい何かを生み出していくことへの関心は乏しい。

 

ナルシシズムの成熟が不十分な場合…

ナルシシズムの病理が近年の日本で蔓延しつつあることを示すために、最近、社会で話題になったいくつかの事件について「ナルシシズム」の観点からの考察を行う。

最初に取り扱うのは、今年7月18日に京都アニメーション第1スタジオに男が侵入してガソリンを撒いて放火し、35人の死者が出た事件である。大変痛ましい内容であり、関係者各位の心が慰められることを強く祈る次第である。

伝えられる所によると、容疑者は「自作の小説が盗まれた」と主張していたらしい。

ここに現れたのは、ナルシシズムが未熟な場合に生じやすい感情である「羨望」だっただろう。羨望とは、他者が自分の持っていない良いものを持っていると感じた時に生じる、強い攻撃性と破壊的な空想をともなう感情である。