# 政治・社会

腎臓移植を願う日本人たちは、アジア各国をたらい回しにされた

臓器移植の闇を追って・その3
高橋 幸春

正式な契約を取り交わしてから間もなく、内山さんは実際にカンボジアに渡っている。2週間ほど滞在したが、移植手術を受けることはできなかった。

「Nからは中止になったとだけ聞かされて、何が理由で中止になったのかは詳しくは聞いていません」

 

その後、山川さんと同じように次から次に新たな渡航移植先がNから告げられた。ベトナム、フィリピン、インドなどが候補に挙がった。しかし、どの国も渡航するまでには至らなかった。

それから3年以上も待たされた。

インドに三度渡航したが……

「インドで移植が受けられるという知らせをNからもらった」

内山さんはニューデリーに飛んだ。しかしこの時も移植手術を受けることはできなかった。Nからは前回同様に、明確な中止の理由は聞かされなかった。

インドに2度目に訪れたのはコルカタ(カルカッタ)だ。

「今度は必ず移植が受けられるという話だった」

しかし、2回目も内山さんは裏切られることになる。

「この時の移植が中止になった理由は、移植医の身内に不幸があり、葬儀のために移植医の都合がどうしてもつかないというものでした」

3度目のインド。

「今度こそと思っていきましたが、移植医が逮捕されてしまった

契約では、旅費は内山さんが負担することになっている。

「結局200万円以上を旅費などに使ったと思います」

「宅配便の荷物」と同じ扱い

そして、今年2月初めに、Nから連絡をもらった。

「パキスタンで移植ができる」

内山さんはすぐに出発の準備を始めた。

インドに行った時、帰国後は武蔵野徳洲会病院の小川由英医師がケアしてくれると、Nから聞かされていた。しかし、出発直前、小川医師が退職し、宇和島徳洲会病院の万波誠医師が診療してくれると聞かされた。

出発直前、Nは5万ドル(約550万円)を内山さんに送り返してきた。

「ドルに換金してパキスタンに持って行ってください」

Nからそう依頼された。

内山さんは日本で最後の透析を受け、2月22日、税関に申告し現金5万ドルを持って、家族の同行もなく1人でパキスタンに向かった。

この頃イスラマバードでは、Nに連れられて山川さんが空港でチェックイン手続きをしようとしていた。1人で帰国できるような状態でないのに、Nは山川さんを中国国際航空に搭乗させようとした。結局、中国国際航空から搭乗拒否に遭っている。

「Nさんが責任を持って日本まで連れ帰ってください」という山川さん家族の思いはまったく無視されていた。

NのHPにはこう記されている。

「渡航から帰国まで弊社日本人スタッフが24時間サポートしますので、言葉の問題等も一切ご心配戴く事はございません。」

これには言葉を失う。山川さんは通訳もなく、1人で移植手術を受けていたのだ。

Nの斡旋で移植を受けた移植患者は、ベルトコンベアに載せられた宅配便の荷物と同じような扱いだった。