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# 政治・社会

腎臓移植を願う日本人たちは、アジア各国をたらい回しにされた

臓器移植の闇を追って・その3
8月20日、「パキスタンで腎臓移植を受けた日本人が今年少なくとも4人いた」と共同通信が報じ、各メディアが大々的に取り上げた。それに1ヵ月先んじて、ノンフィクション作家の高橋幸春氏は、この「深層」を現代新書ウェブで詳細に報じ始めており、重篤の患者にインタビューもしていた。海外の臓器移植の闇に迫る連載第3回!

その1 「パキスタンで腎臓移植手術を受けた日本人の悲劇」

その2「民家で行われた腎臓移植手術の後、夫は再び腎臓を取り出された」

2万人の中から腎臓8つ⁉

移植斡旋ブローカーNのやり口は共通している。すぐにでも移植ができるような口ぶりで、先に移植費用を渡航移植希望者に支払わせてしまうことだ。

パキスタンで意識不明の重体に陥り、移植した腎臓を摘出、奇跡的に一命を取り留めた山川武さん(仮名)。彼は移植前に800万円を「頭金」として3年前に支払っている。

こうした患者に、Nは次から次に渡航移植先を変更した。山川さんにもパラオでの移植の話が告げられていた。

 

外務省はパラオの医療情報について、こう記している。

〈国内に医師は30名弱しかおらず、慢性的な医師不足が深刻な問題になっています。入院施設を有する総合病院も国内に1ヵ所あるのみ、科によっては専門医不在で医療レベルは十分とは言えません。

専門医受診を要する患者は台湾、フィリピン、グアム、ハワイなど国外の病院を受診するのが普通です。血液バンクもなく、必要な輸血用血液はボランティアを募って確保しなくてはならず、輸血の安全性も確立されていません〉

Nはパラオに8人もの患者を送り、移植させようとした。

インドから医師団、看護師団がパラオに入り、医療機器も持ち込まれるという話だった。

当然、この計画は頓挫する。

「本日何度もパラオに電話しましたが、大統領と話が出来ませんでした。関係者が全てナショナル病院事務長の葬式の為、バタバタしているようです。(略)わたくしは直接大統領と厚生大臣との話し合いに行く事に致しました」(N)

病院の事務局長が死亡したために、移植ができなくなったと、Nは患者にメールで連絡している。

私のところにはこうしたNのやり口に遭った患者の声が、本連載開始と同時に寄せられた。

私はNに取材を申し込んだが、Nは拒否する一方で、「名誉棄損で訴えることもある」と答えた。

パラオ共和国の人口は約2万人。いったい8人ものドナー、8つの腎臓をどこから入手するつもりだったのか。是非答えてほしい。

次々と渡航移植先を告げられるも…

山川さん同様、パキスタンで移植を受けた内山直人さん(仮名)も、5年前に1000万円をNに支払っている。彼もまた、渡航移植先を次々に変えられていた。

内山さんは尿からタンパクが出てしまい、40代の頃から血圧も高くなり始めた。50代半ばからは透析を受けるようになった。

「最終的には移植しかないということは早い時期に知っていました」

しかし、生体腎移植は最初から考えてはいなかった。ドキュメンタリー番組で中国が外国人にも移植をしているという報道を見て、海外での移植を知った。

インターネットで渡航移植を斡旋する組織を探した。最終的に行き着いたのが、Nだった。

「カンボジアで移植を受けた患者と、電話だったが直接話をすることができた。それでNに頼もうと決めた」

移植費用は一度に全額を納めた。

「1000万円の内訳は、大まかに4万ドル相当がドナーに、6万ドルが病院などに支払われるという説明だった」

内山さんが負担するのは、あとは現地の滞在費と往復の旅費だけだった。