人材・組織領域でいま注目されている心理的安全性とは何か? 長年、外資系企業で人材育成・組織開発に従事してきた大野宏氏が解説する。
成功するチームをつくりあげる5つの鍵
心理的安全性が注目を集めるようになったのは、グーグルが発表した、あるレポートがきっかけであったといってよいでしょう。
2015年11月、グーグルは自社の情報サイト『re:Work』上で、アメリカの大手通信社であるAP通信(Associated Press)との共同研究の成果として、「チームを成功へと導く5つの鍵」を発表しました。
この5つの鍵について、少し補足を加えながらみていきましょう。
グーグルのレポートには、心理的安全性はチームの成功に最も重要な要素であり、その他の4つ(信頼性、構造と明瞭さ、仕事の意味、仕事のインパクト)を支える土台であると綴られています。
たしかに海外で大きな成功を収めているビジネスチームのメンバーに、お互いの関係について尋ねると、多くの場合こんな答えが返ってきます。
「言葉ではうまく説明できないけれど、とにかくしっくりくるんだ。正直なところ何度か辞めようと思ったこともある。それでも離れられなかった。こんなつながりは他では手に入らないよ。チームは自分にとって兄弟も同然だ」
「理屈ではありません。理屈で判断する人の集まりだったら、こんなことは不可能です。ここで起きているのは、チームを超えたチームワーク。チームを飛び越え、周りの人たちの人生にも影響を与えている」
「とにかくすばらしい気分だ。大きなリスクを取っても、最後には仲間が支えてくれると分かっている。もうメンバーの誰もが、この感覚の中毒になってしまっているよ」
「家族のようなつながりを何よりも大切にしている。そのおかげで、より大きなリスクをとることができるし、お互いを許すこともできる。それに自分の弱さをさらけ出すこともできるんだ。この関係は、形式的なつながりでは絶対に手に入らない」
それぞれの言葉からは、5つの鍵につながるものが感じられることでしょう。