一度着たら手放せない!猛暑の救世主「空調服」ヒットの背景

メイドインジャパンが世界を変えた
照井 康介 プロフィール

海外展開のカギは「東京五輪」

地球温暖化とその対策が地球規模で求められる時代を考えれば、空調服は今後より広く求められることになるだろう。

BtoBならば、建設業や鉄鋼業など特定の業種ではすでに広く浸透しているが、これらの業種では空調服はすでに必要不可欠な用品になっているため、継続的なリピートが期待できる。未開拓な業種も少なくなく、国内で約350万人が従事する農業をはじめ、夏場の屋内外で働く人たちのニーズは今後も増えていくはずだ。また災害の多い日本では、復興支援活動や避難者に対しての暑さ対策としての役割も期待されるところである。

ただコンシューマー向けは、アウトドアや屋外スポーツ観戦など特定なシーンを除けば普及が進んでいるかは不透明だ。

ネックとなっているのは、やはりそのユニークな外見だろう。ここ数年はバリエーションも増え、デザインも多彩になってきてはいるものの、空調服の性質上、膨らむという部分を改善するのは難しい。人は暑いと汗をかき、汗が蒸発するときに熱を奪う。この人に元来備わっている生理的な排熱の仕組みを補助するためには、服の内部に空気を通すことが欠かせず、空気を通すと服はどうしても膨らんでしまう。

ただ、夏場でもマスクをしている若者がいる時代だ。ちょっとしたきっかけで使用する人が増える可能性もあり、ハードルは高いがその先には大きな可能性が広がっている。

 

たとえば公立学校におけるエアコン設置が自治体によっては議論されるが、その代替案として空調服の導入が検討されることも考えられる。もしも生徒や学生といった世代に利用されることになれば、一般向けのハードルは大きく下がるだろう。

可能性という意味では、海外展開にも期待が高まる。近年続いている欧州の熱波の様子などを見ると、エアコン普及率が低く、環境への意識が高い欧州でのほうが一般への浸透は早いかもしれない。

そういった意味では今年、日本で開催されるラグビーW杯や来年開催の東京五輪は、空調服の展示場となり得る。海外大手のユニフォームメーカーなどが乗り出すことになれば、急速に普及が進む可能性もあるだろう。

かつてウォークマンは世界中に未知の体験を提供した。そして今、元ソニーの技術者が発明した空調服が新たな体験を世界に提供する可能性に期待がかかる。

『世界が変わる 空調服』(クロスメディア・パブリッシング刊)