一度着たら手放せない!猛暑の救世主「空調服」ヒットの背景

メイドインジャパンが世界を変えた
照井 康介 プロフィール

加えて、震災復興や東京オリンピックなどによる建設需要の拡大に伴い、業界内でさらなる普及が進んだことが空調服市場の安定と拡大をもたらすこととなった。現在ではアウトドアレジャーや屋外イベント、スポーツ観戦など利用シーンも多様化し、暑さ対策の定番グッズとしてコンシューマーにまで普及が進んでいる。

日本の都市部では、夏は「涼しい、あるいは涼しすぎるエアコンの効いた場所」と「いつ熱中症で倒れるかわからない危険なエアコンの効いていない場所」という環境に分けられるようになって久しいが、空調服の誕生は、そんな夏場のエアコン依存の環境を変えることができる可能性を示したのだ。

 

本来は「地球温暖化対策」商品だった

夏場に快適さをもたらす空調服だが、よく課題として挙げられるのが空気で膨らんだ服のフォルムである。空調服の普及がコンシューマーではなく、特殊な環境下にある職場から進んだのもこれが大きな要因となっている。ファンを回すモーターの回転音、取り付けられたプロペラ、そして膨らんだ服というのは日常的に着用するにはユニークすぎるということなのだろう。

ただ空調服が本当にユニークなのは、その発想の原点の部分だ。現在の使われ方を知っていると意外に思うかもしれないが、空調服は暑さ対策のためではなく、そもそもは地球温暖化対策のために発想された。もちろんこれを両立させているのが現在の空調服なのだが、少なくとも発想の初期段階では主体的な目的は後者にあった。

前述したとおり、空調服は市ヶ谷弘司氏によって発明・開発された製品である。ソニーの技術者だった市ヶ谷氏が独立・起業後、出張で訪れていた東南アジアでその着想を得た。

都市開発が進む街の様子を見て地球温暖化が進むことを確信したことがきっかけであり、そこでまず考えたのは「なぜ地球温暖化が起こるのか」といった問いだったという。この初めの問いが空調服の設計思想及び性能、効果にも反映されている。