日韓関係悪化で「普通の韓国市民」は本当に〈反日〉になったのか

むしろ日本が心配だ
伊東 順子 プロフィール

また、ドラえもんの映画の上映が延期されたり、日本人タレントのデビューが見合わせられるなどの動きもある。業界や自治体の勇み足に比べると、一般市民は冷静である。

たとえばソウル市中区が用意した「ボイコットジャパン」のバナー、あるいは堤川(チェチョン)国際音楽映画祭での日本映画の上映を巡る問題。前者では、区が「NO ボイコットジャパン 行きません 買いません」と書かれた旗(バナー)を掲げ、後者では、堤川市議会が日本映画上映の取り消しを求めた。

しかしフタを開けてみると、公務員が考える「昔ながらの反日」に、一般市民が待ったをかける形となっている(前者では市民から批判が出ているし、後者では、映画祭の主催者が自治体の主張を退けた)。ついつい忖度してしまう公務員の悪い癖は、長年の習慣のようなものだと、韓国の政治学教授が言っていた。

一部には過剰とも思えるパフォーマンスもある。でも、市井には冷静な人たちがいる。それを知っているから、在韓日本人は安心して暮らせるし、「韓国に旅行に行きたいけど大丈夫?」と聞く日本人にも、「普段と変わらないよ」と答えることができる。

 

日本で嫌がらせされる訪日韓国人・在日韓国人たち

そこで思うのは、果たして逆はどうだろうかということ。はっきりいえば、今は日本の「嫌韓」の方が予想不能だ。ネット上はヘイトスピーチや脅迫があふれており、在日韓国人の友人たちの多くが、身も知らぬ他人から嫌がらせにあっている。それでSNS(特にツイッター)をやめてしまった友人たちもいる。

その中には個人や民族に対する侮辱に加え、「従軍慰安婦問題は捏造だ」など本人に関係ないことを言ってくるケースもある。韓国では政府も一般の人も、「これは日本政府への抗議であって、日本国民に向けたものではない」と言ってくれるが、でも、「日本国民」にもいろいろな人がいるのだ。

それは、ネット上だけでない。つい最近も、日本に来ていた韓国人観光客が飲食店で暴言を吐かれ、店から追い出す様子が写っている動画を見た。また、地下鉄で韓国語で話していて、日本人から「うるさい、帰れ」と言われた若い女性も知っている。さらに、職場の上司や取引先の日本人から、「韓国さあ、どうかならないの? 文在寅って何でああなの?」とか、仕事と関係ない韓国の話をしょっちゅうされるという話を、在日韓国人の友人から聞いた。

過去には在韓日本人も同じような経験した。でも、最近は本当に少なくなった。韓国の人々の対人マナーはとても洗練されたし、テレビニュースなども、日本政府批判をさんざん流した最後には、「それでも皆さん、日本人観光客には親切にしましょうね」とアンカーがまとめる。

日本でも、ひとこと言ってくれたらいいと思う。「韓国の皆さん、安心してくださいね」と。