ソウルで行われた「ホワイト国除外」を非難する集会〔PHOTO〕Gettyimages

日韓関係悪化で「普通の韓国市民」は本当に〈反日〉になったのか

むしろ日本が心配だ

今回の不買運動の「過去との大きな違い」 

「うちは政治の話はタブーなんです。特に日韓問題は夫婦で話さないことになっている。だから、今回の問題で夫がどう思っているかわかりません」

こう話すのは、結婚28年の在韓日本人妻だ。二重国籍の長男は日本の大学院に進学したが、今は兵役のために韓国に戻り、休戦ライン近くの部隊にいる。夫婦は手作りの弁当などを抱えて、ちょくちょく面会に出かける。「古参兵からのいじめは大丈夫か」「北朝鮮との間に不測の事態がなければいいけど」――そんなことが今は心配だという。

「結婚した頃はね、日韓で何かあるたびに大げんかになったんですよ。日本が悪い、いや韓国の方が変だよって。夫は大声を上げることもあって、その時は本気で離婚しよう思いました。でも、もう今はもうそこにはふれない。長女の結婚問題もあるし、そういう話をしている場合じゃない。そっちの方が大切。というか、日韓問題はどれだけ話しても、わかり合えないと思いますから

こういう夫婦を他にも知っている。知り合いの在韓日本人男性はこう話す。

「妻と意見が合わないのはわかっています。だから、その話題は出さない。日韓夫婦は、みんなそうじゃないかな。歴史認識が一致しなくても、夫婦はやっていけますから」

 

なるほど、政治問題は棚上げして、国民同士は仲良くすればいいのかなと、単純に考えることもできる。男性が続ける。

「日本製品不買とテレビでは言ってるけど、普通に売っているし、買っています。回転寿司チェーンだって、相変わらず行列ですよ。メディアが騒ぎすぎだと思います」

それはわかる。私自身、1990年に韓国で暮らし始めて以来、何度も日韓関係の悪化を経験し、今回のような日本製品不買運動にも遭遇してきた。

90年代、日本大使館前で大量のマイルドセブンが燃やされた日、副流煙をたっぷり吸ったあと、ためしに近所のスーパーを回ったら、笑顔で隠してあったブツを出してくれたのを思いだす。今回も同じで、スーパーから消えたはずの日本製ビールが、よく見ると棚の隅っこに置いてあったりする。日本製のビールを棚に並べているのをスマホで撮影されて晒されたら面倒だ。面倒は回避する――。生活者の知恵だ。

8月13日にソウルで行われた、「ホワイト国除外」に反対する集会〔PHOTO〕Gettyimages

とはいえ、今回の不買運動は、これまでとは少し違っている。最大の違いは不買運動のきっかけが、歴史問題でも領土問題でもなく「経済的圧力」にあったことだ。背景には、「豊かになった韓国」がある。

今や大企業の賃金は日本より高いと言われ、日本旅行は国内旅行よりも割安と言われる。それがどういうことだ。豊かになったはずの韓国が、いまだ経済的には日本の従属下にある?! しかも日本政府はそこの部分で韓国に圧迫をかけてくる?! ――昔のことを知らない世代ほど、衝撃は大きかったかもしれない。