1941年12月8日、真珠湾爆撃の成功を喜ぶ日本軍〔PHOTO〕Gettyimages

太平洋戦争に学ぶ…話題の「MMT」がハイパーインフレを招くリスク

「高橋財政」の教訓を生かせ

参院選で消費税の廃止を強く訴える「れいわ新選組」が躍進したことで、同党が掲げる経済理論MMT(現代貨幣理論)が注目を集めている。MMTは異端の経済学とされ、主流派などからは「ハイパーインフレを誘発する」など、手厳しい批判が寄せられている。

日本はドイツと同様、20世紀以降の主要国としては極めて珍しい、ハイパーインフレ(厳密には準ハイパーインフレ)を起こした前科を持つ国である。一連の歴史を紐解くことで、MMTが本当にハイパーインフレをもたらすのか、それとも杞憂に過ぎないのか、何らかのヒントが得られるはずだ。

 

限りなくケインズ経済学に近い

MMTは、ごく簡単に説明すると、自国通貨建てであればインフレが発生するまで財政出動を行うことが可能であり、生産力の限界まで経済を拡大できるという経済理論である。

既存の経済学では、仮に自国通貨建てであったとしても、過大な政府債務は金利の上昇を招き、民間の設備投資を抑制する(いわゆるクラウディングアウト)ことから、弊害が大きいと認識されていた。だがMMTでは、中央銀行はいくらでも国債を購入できるので、低金利の継続が可能であり、民間の設備投資を抑制することはないとしている。

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基本的にMMTは、財政出動によって需給ギャップを埋めるという立場であり、物価についても、やはりモノやサービスの需給で決まると考えている点などから判断すると、限りなくケインズ経済学に近いとみなしていいだろう。

だが、市場からの資金調達ではなく、中央銀行による直接引き受け(つまり通貨発行)によって財政出動を行うということになれば、市場には大量のマネーが供給されるので、一般的にはインフレ懸念が生じる。

インフレの根源的な理由はともかく、MMTでは、インフレ・リスクが高まった場合には、財政出動を停止したり、増税することで抑制できるとしている。同理論を政策の柱としている「れいわ新選組」も、インフレ率が2%を超えた場合には、財政出動を抑制すると主張しているので、インフレは事前にコントロールできるという立場と考えられる。

これに対して、主に主流派や実務家からは、現実にインフレをコントロールするのは不可能であるとの批判が多数、寄せられている。MMTに対する批判には様々なものがあるが、インフレが抑制できなくなることへの懸念が最も大きいとみてよいだろう。